最近になってフェイスブックに黒く塗りつぶされたプロフィール写真を見かけた方、日本にもいらっしゃるのではないでしょうか。
こんなプロフィール写真。一見何の変哲もありませんが……。
黒く塗りつぶされた画像には、意味が込められているのは言うまでもなく。フロリダ州サンフォードで2月26日、丸腰だった黒人少年トレイボン・マーティン氏が自警団のヒスパニック系男性に射殺される事件が発生しました。リベラルを中心にして司法に正義を求めるなか、大陪審は7月13日にジョージ・ジマーマン被告に無罪判決を申し渡したんです。黒く塗りつぶされた画像は、判決への抗議の印というワケでございます。
判決後、全米各地で抗議デモが展開され、NYのタイムズスクエアには数千人がストリートを埋め尽くしました。半面、勢い余った活動家が商店のガラスが割るなどといった物騒な騒動にも発展したんですよね。
怒りをぶつける方向性を間違えている気がするのは、私だけでしょうか。
オバマ米大統領は勢いを増す抗議デモに対応し、7月14日、マーティン少年の死は「家族や社会にとってだけではなく、アメリカの悲劇」との同情的な見解を寄せました。ただし、「法治国家であり陪審が結論を下した」とも明言。国民に平静を呼びかけたんです。15日にはホワイトハウスのカーニー報道官も大統領が関与して連邦刑事あるいは民事訴訟を引き起こす方針にはないと説明しており、今回の判決で決着がつく公算が大きいんですね。
今回の事件はご家族関係者の方々にとって魂を突き刺す悲劇の何ものでもありません。人々が堪えきれない憤怒を覚えるのも、理解できます。
ただ誤解を恐れずに指摘させていただくなら、例えばマーティン少年の事件の約1年後である今年2月21日にNY市警のパトカーに轢かれて死亡した日本人学生はどうなるのでしょう? デモ抗議を通じ正義を求め社会に問題提起するのは重要ですが、同じような手法で格差撲滅を目指した「ウォールストリートを占拠せよ!」はアメリカを変えたのでしょうか?
フロリダ州が銃社会アメリカのなかでも特殊な地域である点は、見捨てておけません。同州は野生の動物の宝庫であり蛇だけでなくワニ、野生の豚が闊歩するエリアなんで住民が普通に銃を携行しているんですよね。今回のケースのように、警察を信用しない億万長者が住む高級住宅には自警団を雇うなんて当たり前。決してあってはいけないことながら、銃で人を射殺しても人種的差別の意図を証明できないと公民権侵害などを申し立てるのは非常に困難なんです。
正義を渇望しているのなら、抗議デモの名の下に拳に力を込めるよりまず選挙に参加していただきたい。平等を標榜するなら、まずは毎日の行動であなたが手本をみせてはいかがでしょうか。私はキリスト教徒ではありませんが、マタイ伝には「Do unto others as you would have others do unto you(己の欲するところを人に施せ)」という有名な言葉もございますし。大河の一滴でも、水面にはきっと、波紋が広がるはずでしょうから……。
(デモ抗議関連の写真、出所はPolicymic。)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2013年7月16日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。