米連邦公開市場委員会(FOMC)が出口政策入りというパンドラの箱を開けるには、四つのカギが必要──ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙が16日の引け前、Fed番記者であるジョン・ヒルセンラス氏と別の女性記者ビクトリア・マクギレン氏の連名で伝えました(タイトルは「Fedが資産買入の出口で直面する、縮小へ向けた4つの条件/Four Factors the Fed Faces on Bond-Buying Exit」から「出口政策の不確実要素/Wild Cards For The Fed’s Exit Policy」に変わりましたが、内容は同じです)。
バーナンキFRB議長は6月19日のFOMC後の記者会見で、今年終盤から資産買入の縮小に取り掛かり、2014年半ばに終了する可能性があると発言しました。しかしこうした出口入りへの見通しはWSJ紙によると1)労働市場の改善における持続性、2)失業率、3)インフレの2%回帰、4)財政引き締め動向──の四つの条件に掛かっているといいます。
デューク理事(右)は8月末に辞任、バーナンキ議長も出口を見届けることはありませんが……。
1)については、雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)が過去9ヵ月間で月ベースで20万人増を示す一方で、経済活動は1.5%増程度しか拡大していない。従って就労者数の増加が持続性を維持できるか、不透明といえる。
2)について、バーナンキFRB議長は資産買入の縮小の開始が7%、終了する頃には6.5%になると想定していた。とはいえ多くのFOMC参加者は、労働参加率の動向やパートタイム労働者の動向と合わせ失業率の目安に疑問を向け始めている。たとえば足元の低下の一端は労働参加率の低下にあり、6月雇用統計では労働参加率の改善に伴い、失業率が上昇していた。
3)では、インフレはFOMC声明文によると一時的要因でインフレが抑制的とされていた。半面、セントルイス連銀のブラード総裁のようにディスインフレが持続的となるリスクに警鐘を鳴らすメンバーも出てきた。
4)については、今後中間選挙を2014年に控え債務上限引き上げ交渉などが決裂するリスクがくすぶる。
FOMCは春頃から徐々に資産買入の縮小への地ならしを進めてきましたが、条件次第では縮小の時期が9月から後ろ倒しする自由度を確保したかったんでしょう。労働市場やインフレという2大統治目標に対する不透明性以外に、米6月新築住宅ローン申請件数が前月比で15%も落ち込んだように米債利回り急伸の弊害を確認し始めたところですし……。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2013年7月17日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。