不動産需要が盛り上がる今、本当に住宅は買いか? --- 岡本 裕明

アゴラ

日本でマンションの販売が好調のようです。6月は前年同期比22%増、1月~6月で見ても前年同期比17.1%増になっています。大きな理由は二つ。一つは金利が先々上がるのではないかという懸念。アベノミクスでインフレ脱却といわれていますからそうなれば10年もの長期金利は上がり、長期の住宅ローンもあがる、というシナリオかと思います。


二つ目に不動産価格の上昇の傾向から将来、マンションが値上がりするのではないかという心配から先回りするのでしょう。更には消費税のこともあるかと思います。もうひとつ加えるならライフスタイルの変化、ということをあげておきます。高齢者もマンション住まいが楽だということで古い戸建てから移り住む人は増えてきています。バリアが少なく、エレベーターもあります。管理もセキュリティーも戸建てよりはるかに負担が少ないのです。一部で億ションが飛ぶように売れるというのもこのトレンドの流れにあるかと思います。

一方、大前研一氏が氏のブログで「賃貸の選択は間違っていない」と述べています。日本は40歳未満の持ち家率が1983年から08年の25年間で42.2%から28.4%へと約14ポイント低下した、というのです。家の価格が上がったこと、賃金の下落があったことがあり、持ち家を諦めた人は多いでしょう。氏は無理をして多額のローンをして生活が窮屈になることは必ずしも正しくないという趣旨の展開をしています。

私も基本的に同意しています。不動産の話はここでも時々させてもらっていますが、日本の不動産が今後値上がりする要素は少なく、特定の地域や物件に絞られるとみています。6月10日号の日経ビジネスに「沸騰 不動産 次の風景」という特集があり、その中に不動産があがりそうな東京近郊のエリアマップがついているのですが、大きく上昇が見込めるのはいわゆる有名なエリア、品川、渋谷、世田谷、恵比寿、広尾、目白、文京の一部などに限られているのです。

では次に、金利は本当に上昇するのか、といえば、少なくとも大幅な金融緩和を先行させたアメリカでは上がっていない、と言っておきましょう。傾向としてはデフレからの脱却はありえるかもしれません。が、ディスインフレという時代ですからインフレがどんどんやってくるとは考えにくいのではないでしょうか?ハイパーインフレがやってくる、というF氏の主張はいくらなんでも無理がありそうです。

次に大前氏も指摘しているように日本には空き家が13%もあるし、今後もどんどん戸建て物件は市場に出てくるのです。高齢化に相続税増税、それに対して土地付は価格の問題で需要の底は知れているのです。

実は私も最近、東京のある一角に事業用土地を仕込みました。ですが、借地権です。なぜなら借りたほうが絶対に得なのです。日本は借地人の権利は強いのです。また、自分の持ち家にこだわり続けること自体が思想的に変化してくると見ています。つまり、北米のようにライフスタイルに合わせて住処を変えるのです。これの方がどれだけ理にかなっているか、と思います。

私は賃貸の選択は大いにあるべきだと思います。自分の一生を家の購入と共にフィックスするのは今の時代、つまらないと思いませんか?そう考えると今無理して家を買う理由は私にはほとんど見つけられないのであります。

今日はこのぐらいにしておきましょうか?


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年7月17日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。