世界就職という選択肢について

松岡 祐紀

「セカシュー」という言葉をご存知だろうか?
世界で就職することを指す造語である。


この本に紹介された若者5人は、それぞれインドネシア、シンガポール、マレーシア、タイ、それに香港という国々に就職する。いずれもアジアの国々だが、世界中の優良企業が今やアジアに注目しているので、そこで成功すれば、次は世界が舞台だ。
(実際、この本にはそのような例も紹介されている。ただし、すべては実話を元にしたフィクションという形でだが)

そういった意味で、セカシューと呼んでいるのだろう。


「世界で就職」といえば、聞こえはいいが、その内実は敗者復活戦である。

おもに、新卒一括採用という制度で採用された若者たち、それに漏れた若者たちが再起を期す場として、アジアを選ぶ。アジアの国々は今のところ右肩上がりの成長を続けているので、売り手市場だ。

そのときに大事になってくるのが、日本人として当然持っているべきビジネススキルであり、コミュニケーション術である。

外国人としてコミュニケーションを取るというと、日本人はすぐに英語を思い浮かべるが、実際は英語よりもコミュニケーション能力の高さが一番重要であることが指摘されている。そして、最終的には英語よりもその国で使われているローカルな言語を身につけることが彼らに溶け込む一番の近道であることも、きちんと描かれている。

日本の社会でブラック企業や過労死がまかり通っているのは、すべては日本人の耐性が高すぎることにほかならない。ほかの国の人たちであればとっくに辞めているような過酷な労働環境でも、彼らは必死に耐えて働く。滅私奉公なんて考え方は、ほかの国では聞いたことがない。(ちなみに今、住んでいるアルゼンチンで一度、この考え方を説明しようとしたが、ポカーンとされたし、ヨーロッパでもそんな考え方は聞いたことがない)

負けてもいいし、文字通り死ぬ思いをしてでも働く価値がある職場なんて、この世の中にはほとんど存在しない。

運悪く、職場環境の犠牲者になった場合のそのセーフティーネットとして、セカシューが機能すれば、素晴らしいことだと思う。敗者復活とは聞こえは悪いかもしれないが、長い人生、一度や二度、負けても取り戻せる社会こそ健全な社会だ。(国もいかにイノベーションを生むかなんて寝言を言っていないで、負けても再度チャレンジできる社会作りこそが、イノベーションを生む源泉だと気づいたほうがいい)

仕事を辞めて日本での再就職が難しいと思う人たちは迷わずアジアを目指せばいい。きっと、それが長い目でみれば日本のためになるし、国力を取り戻す契機になると思っている。

株式会社ワンズワード 松岡 祐紀
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