辻センセと石水センセらの論争、ネタ元提供者のワシにも専門的過ぎてすぐにはフォローしきれん。責任上、周辺知識の勉強をして、いずれフォローするつもりなんで、少々お待ちください。とは言っても学習能力の低さには自信のあるワシのことやから、かれこれ2億年ぐらいはかかるんと違うかな。
うわぁ。誰も笑ってへんがな……ギャグも数字の感覚が合わんと滑る。地球温暖化でも、バックグラウンド(つかっている物差しのサイズ)が違うと、まるで違う景色が見えてくる。
石水センセや炭素同位体の松本センセなんかは、ワシと同じように地球科学的なスケールで問題を見ているように思う。温度は地球全体、時間は1千万年単位、こういう所からスタートすると「1度や2度の温度上昇なんぞ屁ぇでもないがな」という発想になる。
もちろん、ちゃんと「屁なのかウンコなのか」を厳密に議論するときは、データに基づいて細かい話をせなあかんが、具体的な構図が見える前に「2度の温度上昇」なんぞと細かいことを言われると、反射的に鼻で笑いとうなる。
特に、それを根拠に原発の再起動などの別のテーマを論証しようとする動きに対しては、「セコイ理由で勝手なこと言うな」という反発を感じる。根本から発想が違う。エエ格好して言うと、環境問題を微分的に見るか積分的に見るかの違いやな。
さて、前の記事で、これまでの二酸化炭素増加化の例として、石炭紀(大森林時代)の直前と、ペルム紀(恐竜時代初期)直前のケースをあげたところ、「今の温暖化は急速だから、過去よりも激烈なものになる」との反論を受けた。興味深い事例もいくつも教えてもらえた。
そやけど、どうも議論が逆のような気がする。石炭紀の場合もペルム紀の場合も、その時期に生物種の90%以上が絶滅している。恐竜絶滅のときよりも、強烈な環境変化だとされる。今のところ、二酸化炭素の増加が環境変化の原因なのか結果なのか、あるいはその両方なのか(つまり金星化のような話)はわかっておらん。ただひとつハッキリしているのは、大絶滅の後には必ず生物界の大繁栄がおこっている事や。
そやから、この手のカタストロフを考えると、人類のやることは二つあると思う。まず、90%の負け組に入らんようにすることと、少しでも負け組の比率を減らして種の多様性を確保することや。そして、優先順位は圧倒的に前者が高い。これはあんまり異論ないのと違うかな。
現状の温暖化(と言われるもの)の原因としてあげられているもののなかで、人類がまだしも直接対処できそうなものは、二酸化炭素濃度ぐらいしかない。太陽活動の活性化など手の出しようもないがな。
何度も書くが、この際、一番大事なのが植林や珊瑚礁の育成などのバイオによる炭素固定技術の進化やと思う。原発による火力発電の代替なんぞは、これと比べるとだいぶ優先順位が低い。
理由を言おう。まず、原発は既に排出された二酸化炭素を吸収するわけではない。これまでに排出された分への対応にはやはりバイオが必要や。これは、化石燃料以外の発生源についても同様や。次に、原発が作れるのは電気だけやから、その他、交通やら製造業やらの分は手つかずや。
さらに、原発が火力の代替を完璧にこなしたら、安くなった化石燃料をポンポン燃やしよる奴が出てくるのは、目に見えておるがな。そやから、原発の再稼働は、良くて時間稼ぎにしかならんのじゃな。
温暖化自体を利用して、植林や珊瑚礁の育成やらで炭素固定をするということを考えても、温暖化が進めば、辻センセがおっしゃるように、あちこちで固有種やら希少種の絶滅がおこる。そやけどこれは、環境変化にともなう必然と考え、代替種を用意するようにする。まあ、何もせんと、自然が用意してくれるのを待つのが正解かも知れんがな。
繰り返すが、温暖化や二酸化炭素の増加は、基本的に多くの植物にとって追い風になる。ビニールハウス内で灯油を炊くことを考えたらわかる。
そやから、乾燥を伴わない温暖化だけで砂漠化が起こるわけではない。赤道直下には砂漠は皆無や。そして熱帯圏が広がることは基本的に生物相を豊かにする。
日常的な小さな変化(1~2度の温暖化なんぞ)を無理矢理元に戻しに行くより、避けられない大きな変化のプラス面を生かすようにする。そのための犠牲はある程度甘受する。なんや、橋下はんが言うとることと似ている。
TPPなんぞの日本経済の話なら、アゴラでも、むしろ多数派の発想やろ。この思想を環境問題に持ち込んではどうやろ。地球維新とでも呼ぶか。
まあ、こういうことを考える場合、ワシが普段、維新の会なんぞに感じておる危険性がそのまま自分の物になることの自覚がいる思う。
小さな犠牲に目をつぶると決めたやつは、だんだん大きな犠牲にも目をつぶるようになる。地球科学的なスケールでは見えないものも多い。その意味で、辻センセらの批判は、きちんと読んでおかんとあかんと思うんやがのう。
ヨハネス 山城
通りがかりのサイエンティスト