民主党は解党して出直せ

池田 信夫

今回の参院選ではっきりしたのは、民主党が山本太郎のような泡沫候補にも勝てない泡沫政党に転落したということだ。その直接の責任は、党が公認しなかった候補を応援して分裂選挙にした菅直人氏にあるが、ぎりぎりまで公認調整もできなかった執行部にも責任がある。それなのに海江田代表も細野幹事長も続投というのでは、党の再建はおぼつかない。


もともと民主党は、鳩山兄弟や船田元氏などの「保守新党」構想に、社民党の残党が合流して1996年にできたもので、理念の上では保守を掲げながら、組織は労組に依存する中途半端な党だった。そこに自由党で行き詰まった小沢一郎氏が2003年に合流して集票組織はできたが、今度は小沢vs反小沢の党内抗争が始まり、また分裂してしまった。

いろいろな意味で、民主党政権は小沢氏がつくり、小沢氏がつぶしたようなものだ。自由党と合流する前の民主党は、ほとんどアマチュア集団で、霞ヶ関にも相手にされていなかった。そこに小沢軍団の組織力が加わったのはいいが、彼が東京地検にねらわれて代表を辞任したところから迷走が始まった。

この後任としては岡田克也氏が有力だったが、小沢氏は1週間足らずで代表選挙をやり、彼に忠誠を尽くす鳩山氏を代表に選んだ。このとき、せめて岡田氏が代表になっていれば、民主党政権の寿命はもう少し長かっただろう。鳩山氏は政権交代は果たしたものの、とても首相の任に堪える人物ではなく、1年足らずで菅直人氏に交代した。

これがさらに悪い結果をもたらした。特に2011年の震災と原発事故に際しての菅氏の混乱した危機管理は、全国の原発を止めるなどの甚大な被害をもたらし、日本のエネルギー政策は破綻してしまった。そしてまた党内抗争が再燃し、小沢氏は離党した。この時点で、党としては成り立たなくなっていた。

いま残っているのは、選挙で惨敗して求心力を失った執行部と、それに対する岡田・前原グループだけの、10年ぐらい前のアマチュア政党の時代に戻ってしまった。かといってみんなの党や維新の会は、政党として体をなしていないので、民主党に代わる存在にはなりえない。

しかし今回の選挙では自民党が選ばれたのではなく、野党が自滅したのだ。高度成長期のバラマキ政治から脱却できず、膨張する一方の財政を日銀の財政ファイナンスで乗り切ろうというアベノミクスが破綻するのは、時間の問題だ。21世紀にふさわしい「小さな政府」をめざす政党は必要である。

小沢氏が実質的に政界から消えた今、彼に匹敵するリーダーシップをもつ人物は野党に見当たらないし、もう「民主党」というブランドにも価値はない。民主党はいったん解党し、岡田グループを中心とする「右派」が他党からも人材をつのって新党を結成してはどうだろうか。さいわい次の選挙までには3年ある。1996年の結党のころに戻ったつもりで、新しい日本のリーダーを出してほしい。