水力は新規開発促進から既設維持管理の重視へ --- 石川 和男

アゴラ

再生可能エネルギーと言うと、身近に見ることが多い太陽光発電(ソーラーパネル)、たまに見るかもしれない風力発電(大きな風車)、滅多にお目にかかれない地熱発電(温泉地の近く)、まず見ることのない廃棄物発電やバイオマス発電を思い浮かべる。これらは震災以降の脱原発ムードで一躍脚光を浴び始めて、別名“新エネルギー”と呼ばれることがある。


しかし、火力発電や原子力発電よりも前からある再生可能エネルギーがある。それは水力発電だ。次の2つの図〔=一次エネルギー国内供給の推移、国内の発電電力量の推移〕を見ればわかるだが、水力(一般水力)は、原子力や天然ガスよりも以前から一定の役割を果たしてきた。

<一次エネルギー国内供給の推移>

<国内の発電電力量の推移>

水力発電だけを見ると、次の図〔=水力発電設備容量・発電電力量の推移〕の通りである。これを見ると、水力開発は近年では殆ど頭打ちになってきていることがわかる。

<水力発電設備容量・発電電力量の推移>

水力は再生可能エネルギーの一つであるから、固定価格買取制度(FIT)の対象になっている。直近2013年度の買取価格は次の表の通りだ。

それでも、現在以上に飛躍的に水力開発が進むことは期待できそうにない。資源エネルギー庁によると、日本の包蔵水力は次の表の通りだ。

 
一般水力について、既開発は2225万kW(1918地点)で1地点当たり1万1600kWだが、未開発は1210万kW(2708地点)で1地点当たり4469kWでしかない。どこかの新聞社のように“未開発地点だけでも原発12基分もある”などと言ってはいけない。笑われるだけだ。

1地点当たりがこの程度の規模でしかないのだから、これらをいくら開発しても原子力発電所の代替にはなり得ないことは誰の眼にも明らかだ。水力の新規開発には開発地点の不便さなどから相当の時間を要するだけでなく、いわゆる河川環境保全への意識の高まりから、水利権取得が難儀な時代に入って久しい。

水力発電の今後について、FITによって小水力開発が幾分かは進む可能性もないではないが、総じて新設水力への期待は大きく持つべきではない。むしろ、既設水力の維持・管理に力を傾注することが、エネルギー需給上でも最適な政策判断となるだろう。


編集部より:この記事は石川和男氏のブログ「霞が関政策総研ブログ by 石川和男」2013年7月31日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった石川氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は霞が関政策総研ブログ by 石川和男をご覧ください。