エジプト問題をどう解決するか

アゴラ編集部

日本がお盆の間にエジプトが大変なことになってます。軍部が「クーデター」でムルシ前大統領らから政権を奪取してから混乱が続いていたんだが、軍部が中心になって暫定政権を発足。その後、軍部とムルシ支持のムスリム同胞団などイスラム過激派とが衝突し、死者が800人を超えた、という報道もある。エジプト情勢はなかなか難しい。おおざっぱにいえば、欧米とイスラムの代理戦争です。前者の中でも米英イスラエルが敵対的なイスラム勢力を分断させ、またイスラム各国内を混乱させて自分たちに有利な情勢を作り出したがっていることから起きている。アルカイダなども分断勢力に利用されているんだが、こうした流れは中東における欧米の植民地支配の延長線上にあり、それが19世紀からずっと続いています。


しかし、トルコにせよシリアにせよエジプトにせよ、イスラム内部にもかなり根強い対立構造があります。火をつけた欧米も混乱状態に手をこまねいている。エジプトにおける軍部は、かつてイスラエルと激しい戦争を遂行した勢力なんだが、米国の梃子入れで今ではすっかり対イスラエルには牙を抜かれ、「反イスラム」的な利権にまみれています。

軍部はムバラク体制を支持し、保守的なイスラム勢力を弾圧してきました。その反動から「アラブの春」でムバラク体制が引っくり返されたというわけ。しかし、その後のムルシ体制は揺り戻し過ぎた。イスラム独裁の方向へ進みそうになり、軍部があわてて「クーデター」を起こしました。軍部による暫定政権側もムスリム同胞団側も双方で非難合戦を繰り広げていて、シリア情勢と同じようにどちらに「正義」があるのか、という観点からは答えが出ないでしょう。

こっちはフィフィさんというエジプト人タレントのTwitterから画像を紹介しているブログです。反「クーデター」側からの視点。治安維持部隊が「虐殺」している、と書いています。読書は心の栄養
エジプトの虐殺の一端

こっちはチェニジアとエジプトを比較しているブログです。イスラム内も保守過激派・中道派・世俗穏健派といろいろ。チェニジアの場合、イスラム政府よりもっと過激な勢力が国内にいるおかげでバランスを取っているが、エジプトは過激派の同胞団と中道・穏健勢力で対立する図式になってしまった、と書いています。中東の窓
ムスリム同胞団弾圧(若干の感慨 補足)

いずれにせよ、これらの混乱の原因は、欧米の植民地支配の残滓と中東におけるイスラエルの存在にあります。米国がエジプト軍部に対して「クーデター」のお墨付きを与えた、という話もあり、まがりなりにも民主的な選挙で成立したムルシ前政権とムスリム同胞団に「正義」はないものの「大義」はある。中道派といわれたエルバラダイ氏による調停も頓挫した今、エジプト動乱の解決に対する欧米の責任は重い、と思います。


ソフトバンク孫氏が「ニッポンの最高の経営者」というのは本当か
キャリコネ
なかなか興味深い紹介記事です。『週刊現代』が選んだ「最高の経営者」で、アゴラやGEPRにも寄稿している政策研究大学院大学の石川和男客員教授も選んでいます。それは、日本介護福祉グループの藤田英明会長、HASUNAの白木夏子社長、NPO法人フローレンスの駒崎弘樹代表理事。バランスのとれた推薦です。

NYタイムズ、新有料メニューやボストン・グローブ売却で生き残りを
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Amazon創業者によるワシントン・ポスト紙の買収が話題になっています。これはNYタイムズの例。なんとか身売りせずにやってるようなんだが、経営的には相変わらず苦戦しているようです。

研究不正が起きる根本原因について
世界変動展望
競争が激しくなったことで不正が起きるのはわかります。このブログでは、監督官庁や国民にも大きな責任がある、と書いている。これからも技術研究開発で国を建てていかなければならない日本では、この問題はかなり大きいと思います。

ビル・ゲイツ曰く、世界中でインターネットに接続できるようにするよりも、ワクチンプロジェクトのほうが役に立つ
スラッシュドット・ジャパンIT
表題に関するあちこちの記事を紹介してます。インターネット技術について、ビル・ゲイツ氏は「マラリアで死にそうなときに空を見上げ、インターネットに接続する気球を見るだろう。しかし私にはそれが何かの助けになるとは思えない」とか「子供が下痢をしているときに、それを治療できるWebサイトはない」などと発言。宇宙開発ビジネスについても「空にロケットを打ち上げるんだから面白いと思うが、私が金をつぎ込む領域ではない」という考えらしい。彼が今いったいナニを考えているのか、ちょっとしたヒントになりそうです。


アゴラ編集部:石田 雅彦