ネット選挙の事後報道をやった産経はエライ

新田 哲史

あっという間に8月も最終週に入りましたね。
そういえば早いもので初のネット選挙となった参院選が終わって一か月以上が経過した。そんな中、先週金曜(8月23日)に産経新聞が載せていた当選議員のネット発信を検証する記事が目を引いたので、ご紹介しておきたい。ここ最近、野球の記事で産経大阪のウェブ版夕刊フジをこき下ろしたので「宿敵」に思われそうだが、別にそんなことはない。もともと僕は“タカ派”だし、是々非々のスタンスだ。では、見出しとリードを引用する。

「ネット政治利用、1割に激減 参院選当選者 選挙中のみ『その場しのぎ』」
インターネットを使った選挙運動が解禁された7月の参院選が終わり、当選者のネット利用が選挙中に比べ約1割に減ったことが22日、産経新聞の調べで分かった。公職選挙法は選挙期間外のネットを使った選挙運動を禁じているが、一般的な政治活動は常に認められている。参院選からわずか1カ月でネット利用が激減したことは、当選者が「その場しのぎ」のムードでネット選挙に臨んでいた実態を浮き彫りにしている。

この産経の記事が優れているのは、まず〈1〉事後検証を怠りなく継続したことだ。実は結構、これが難しいんですよ。選挙が終わると「喉元過ぎれば」なのは政治家だけでなく、メディアも同じで日々のニュースを追う仕事が優先せざるを得ない。たとえば参院選東京選挙区の担当記者が所属していた都庁クラブは、終わった選挙のことよりも9月7日の五輪開催地決定の準備で忙殺されている。それにテレビや週刊誌は視聴率、販売部数を気にする以上、「オワコン」の参院選ネタよりも他のことを追っかけたい。だからこういうときこそ新聞の出番だ。編集サイドが販売部数の増減をあまり気にせず、事後検証という地味な作業にじっくりと取り組むことができるのが強み。参院選の前から政治家がネットでの日常活動を地道にやる必要性を有識者や業者から提案され続けていたなかで、「やっぱり出来てなかったね」と有権者に“告発”した意義は小さくない。

※日常的な政治活動はネットで定着するか。写真は総務省のネット選挙ページ
130826ネット選挙

さて、もう1点は、〈2〉ネット分析ツールの活用で、予期されていた発信件数の減少を感覚的なものから、「1割に減った」と数字で可視化したことだ。ネットツール活用は、毎日新聞が選挙期間中から精力的に分析記事を発表していて、産経はそれに刺激された分もあったのだと思う。拙稿でも先日、新聞社によるデータジャーナリスト育成を論じたが、こういう積み重ねが業界全体で記者のITリテラシーを高め、次回のネット選挙をもっと有意義に報道するための基盤が整っていくのだと思う。ただ、データサイエンティストならずとも、IT企業で普段からこの手のツールを使った分析の仕事をしている方からみれば、まだまだ全然使いこなせていないだろう。いや筆者も人のことは言えないけど(汗)、クロス分析をこうやれば面白いデータが浮かぶかもしれない的な、スキルも経験値も積むのはこれからだ。

ちなみに、「1割」に激減した背景って、そもそもネットであろうとなかろうと、選挙が終わった後なんで、有権者の前の露出が減ってしまったのは自然な流れ。しかしリアルの政治活動で、暑いさなかも毎朝駅頭に立っている議員さんがいるのと同じように、キラキラ吉良たんは継続して発信して存在感を維持するように努めたに過ぎない。もちろん、その他大勢は、新人議員を中心に慣れない国会活動に忙殺されたり、お盆休みも挟んだり、選挙期間中に受けていた業者やスタッフの運用サポートが無くなったりといった事情もあるのだろうけど。

※着々とネット発信を続ける共産党。都委員会Facebookページより
130826共産党

さて、宿敵のはずの産経でも頑張っていることが立証された共産党だが、党勢拡大へ手を緩めませんね。今週は、阿佐ヶ谷のトークライブハウスで、キラたんと2人の若手都議がイベントをやるそうだ。若者は街頭演説なんかシカトだけど、ああいう空間で政治家の話を聞くと不思議と親近感が湧きやすい。これホント実感。ネット選挙の熱心さといい、PRセンスの良さを感じる。共産党嫌いだけどそこは評価します。ただし、トークライブイベントの魅力は、考え方が違う者同士がガチンコ討論するところにあるので、同じ考えを持った人間の馴れ合いでは、しょぼいパフォーマンスに終わりかねないけど、どうすんのかな。ワ●ミ創業者とキラたんの対決が見られるならプレミアチケットでも買うな。わはははは。

ではでは、今週もお仕事頑張りましょう。
ちゃおー(^-^ゞ

新田 哲史
Q branch
本を書きたいけど、その機会は永遠になさそうな(泣)
広報コンサルタント/コラムニスト
個人ブログ