さて2か月間にわたり考えてきた「太陽光発電で脱原発はできるか?」というテーマなのですが、今日でようやくまとめです。結論はタイトルの通りなのですが、とりあえず検討してきたことを振り返りたいと思います。
【第1回:敷地面積について(http://usami-noriya.com/?p=879)】
○太陽光発電で原発と同等の電力量を生み出すにはどの程度の面積が必要か計算。結果としては、原発1基当たりを太陽光発電で代替するには100平方キロメートル(山手線の内側の1.5倍程度の面積)が必要となり、日本全国の原発を代替するには2680平方キロメートル程度(概ね静岡県の可住面積全てに太陽光パネルを敷き詰めるイメージ)が必要ということが分かった。
(wikipediaより)
【第2回:土地資産効率について(http://usami-noriya.com/?p=907)】
○日本には4万5610平方キロメートルの農地があり、本格的に太陽光発電による脱原発を考えるならばこれらの土地を発電に施設に鞍替えすることが不可欠、との認識の下で農業と発電事業の土地資産効率を比較。太陽光発電事業の方が分があることがわかり、特に水田との比較に至っては水田の1ha当たりの平均利益が55万円なのに対して、太陽光発電は少なく見積もっても200万は手元に残るので4~5倍も資産効率がいいことがわかった。ちなみに日本の水田の面積は1万6100平方キロメートルなのでこのうちの4,5分の1が太陽光発電設備になれば発電量的には脱原発は可能になる。ということで現状は農地法が存在して農地の太陽光発電設備への転用は認められていないので歯止めがかけられているということになる。これでは農家の方はかわいそうなので、農水省は発電と農業が両立できる仕組みを考える必要がある。
(フジプレアムHPより引用)
【第3回:量産による発電コスト低下について(http://usami-noriya.com/?p=970)】
○現状の1kwhあたりの発電コストは(原子力:8.9円、火力:10.9円、太陽光:33.4円~38.3円)とされているが、太陽光発電に関してはFITの施行以降、設置コストの効率化によって劇的な発電コストの低下がみられており、直近では27.0円/kwh程度まで下がってきている。他方でシリコン型の量産によるコストの逓減は頭打ちで、パネル自体の価格は下げ止まりを見せつつある。こうしたことを考えると、まもなく太陽光発電の劇的な発電コスト低下は止まることが見込まれ、技術革新の影響を考慮しない短期では21.6円/kwh程度に落ち着くことが見込まれる。
【第4回-第5回:イノベーションによる将来的な発電コストの低下について(http://usami-noriya.com/?p=1056)】
○太陽光発電の変換効率は現状の15%程度から2030年には25%程度まで上がることが見込まれる。また成熟しつつあるシリコン型と異なり、CIS型のパネルは製造コストも現在の半分程度まで下がることが見込まれている。これらイノベーションによる影響を考慮すると太陽光パネルの発電コストは7.8円/kwh程度までさがり原発よりもコストが安くなる。だがそれに伴い系統網を21兆円程度かけて大改修する必要があり、それを上乗せすると発電コスト12.2円/kwh程度まで跳ね上がり、原発はおろか火力よりも発電コスト効率が高いかほぼ同等となる見込み。
【第6回:エネルギー源ミックスの考慮(http://usami-noriya.com/?p=1326)】
○日本の電力需要は年間1兆kwh程度だが2010年時点では原発がそのうち2690億kwh程度を担っており、他方で太陽光発電含む新エネは現状は150億kwh(1.6%)程度しか担っていない。今後脱原発を図るには大量に新設備を導入する必要があるが、太陽光発電は発電にムラがあるので大量導入するに当たっては火力発電のバックアップ電源が必要となる。現在の火力発電の総出力が1億5000万kwだが、急な変動に応じていきなり火力発電を稼働することは難しいので、3割程度は常時稼働することが求められる。そうなると、太陽光発電は最大1億500万kw程度の導入しかできないことになる。稼働率が安定しない太陽光発電は、これだと発電量の見込みは年間1020億kwh程度しかならず、2690億kwh発電していた原発の代替は到底無理という話になる。これは物理的な制約なのでどうにもできず、太陽光発電(を含む再生可能エネルギー)の導入上限は全体の10%程度となる。
というようにを色々と検討してきたわけですが、残念ながら太陽光発電による脱原発は、コスト面からも設備面からも無理ゲー、という結論になってしまいました。別に結論ありきで検討したわけではないですが(かなり太陽光にとって有利な設定を随所にしたつもりです)、案の定、という感じです。
ただまぁ太陽子発電設備を大量導入することは
1.農業と両立できれば、農家の有力な収入源となる。農業再生につながる。
2.原発は無理でも火力発電並みのコストにまで近づけることは可能。それが達成されれば国民の余分な負担なしに多少は日本の資源安全保障環境のの改善に貢献することができる。
3.緊急時の電源として活用可能。
というような観点でそれなりに意味がありそうです。よく言われていることですけどね。ただこういった検討は 全て既存の電力網を介して電力を再配分することを前提に考えていますので、本当は他の再生可能エネルギー源との組み合わせで、よりマイクロなレベルで賢い電力の使い方ができるのかもしれません。例えば村や集落レベルで、ベースに水力発電を用いて、太陽光発電をその上に乗っけて、バイオマス発電をバックアップ発電に用いるような形ですかね。そんな難しいことが地域レベルであまりコストかけずにできるのかはよくわかりませんが。
なんだかな~という結論になって残念ですが、やっぱり不安定な電源の導入には限界があると感じたので、次回以降より安定的なマイクロ水力発電の可能性について少し考慮してみたいと思います。
ではでは今回はこの辺で。
編集部より:このブログは「うさみのりやのブログ」2013年8月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はうさみのりやのブログをご覧ください。