シリア問題が一気に浮上してきました。内戦状態の同国で政府軍が反政府派を抑えるため、化学兵器を使ったのではないかとの強い疑惑に対して欧米は国連の動きを待たずに力による制裁を決断しつつあります。
イギリスでは数日以内に空軍による攻撃、ということでXデイが29日とも囁かれています。なぜ、今、シリア問題が急に持ち上がってきたかといえば、勿論化学兵器使用疑惑もありますが、私はアメリカとロシアの関係がその背景にあると見ています。
CIAおよび国家安全保障局の職員だったエドワード・スノーデン氏が極秘情報を持ってロシアに亡命中であることはご存知かと思います。オバマ大統領はこの亡命に対してかつてないほどの勢いでその亡命を受け入れているロシア、プーチン大統領を攻め立てています。
プーチン大統領はもともとアメリカとはソリが悪く、プーチン氏が第二期目の大統領の就任直後、アメリカで行われたG8をキャンセルし、オバマ大統領もその報復でロシアでの会議をキャンセルするという最悪のスタートを切りました。その後も両国の関係はギクシャクしたままです。その背景にはシリアに対して援助するロシアに対抗する欧米という構図も大いにあったわけです。特に国連安保理でシリア制裁に対してロシアが二度までもOKしなかったことはロシアの強硬なる姿勢を改めて見せつけました。多分、独裁者プーチン氏のプレゼンスを表現しているのだろうと思います。
こう見るとシリアへの欧米からの空爆計画は見方を変えればアメリカ、ロシアの代理戦争的な要素がないわけではありません。但し、ロシアはいわゆる戦争を望んでいるわけではなく、平和的解決を求める姿勢を持っています。プーチン大統領がイスラエルで直接シリアへの攻撃自制を求めたりしているのも事実です。また、ロシアに今、戦争をする体力はないし、もともと第二期プーチン政権は極東に重点を置くつもりなのです。
さて、ここで困るのは日本でしょう。なぜならばプーチン大統領と北方領土問題を含む経済連携を模索しており、ラブロフ外相が今秋に日本での具体的協議をする見込みです。そこに欧米から「お前はどっちにつく」と言われれば詰まってしまいます。例えば松山外務副大臣が国連調査団による解明のの重要性を説いたとの報道もありますが、実に日本らしい声明だと思います。
もちろん、化学兵器を使ったとされるならばシリアは即刻止めるべきですが、国連がもはや機能していない世界において欧米主導の独自判断で警察権を行使しつつある世界そのものが間違っていることは事実ですがそれを今言っても始まらないのかもしれません。
ロシアはアサド政権が倒れる可能性はすでに含んでいると思いますし、反政府側との接触もあるという情報も目にしました。とすれば、地上軍を投入せず、空爆を限定的に施すことはアサド政権にとってダメージは大きくロシアをそこまで刺激しないように思えます。いずれにせよ、平和的に最小限の被害でこの問題を解決することが先決になるでしょう。
金融市場はご覧の通り、戦々恐々としています。それこそ、金融緩和からの離脱どころではなくなってしまうかもしれません。この動きは大いに注目したいと思います。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年8月28日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。