サマーズFRB議長の誕生で、2年間に最大50万人の雇用減に? --- 安田 佐和子

アゴラ

米8月雇用統計をうらなう前に、こんなお話。

サマーズ元米財務長官および国家経済会議(NEC)前委員長、イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)副議長との実質一騎打ちとなっているFRB議長レース。混戦もようのなか、エコノミストはオバマ米大統領による指名後のインパクトを分析しております。

BNPパリバは、イエレンFRB副議長が指名されれば「金融政策における中長期的な道筋に大いなる明確性を与え、マーケットを安定させる可能性が高い」と予想。逆にサマーズ前NEC議長に白羽の矢が当たった場合は「金融政策に中長期的な不透明性を授け、秋にかけ米上院での議論が市場の重しとなるだろう」との見通しを示しています。

同時に、サマーズ前NEC委員長がFRB入りは「体制の変化」につながると指摘。その上で、イエレンFRB副議長をはじめとした米連邦公開市場委員会(FOMC)参加者の辞任につながるとも予想しています。サマーズ氏の登場で、バーナンキFRB議長が整えた「コンセンサス重視」の政策から、グリーンスパン前FRB議長が徹底させた「マエストロ路線」へ回帰すると見込んだ上で、このような予想図を描いているのでしょう。

こうした事情からBNPパリバは、オバマ米大統領が量的緩和(QE)の効果に懐疑的なサマーズ氏を選んだなら、「市場のボラティリティ及び金利の上昇を招き、成長を阻害しかねない」と分析。すでにマーケットはサマーズ選出を織り込みつつあるとはいえ、米債利回りの上昇余地が「50bp」に及ぶ可能性を挙げていました。同時にサマーズ氏が時期尚早なQE縮小を実施するリスクをにらみ、米債利回り及び市場のボラ上昇に伴って向こう2年間で米国内総生産(GDP)が0.75%ポイント縮小すると予想。米就業者数にいたっては、35万人から最大50万人の縮小を見込んでいるんです。

オバマさんは、クライスラー救済を推したサマーズ氏に信頼を寄せているとか。

反対にイエレンFRB副議長が指名されQE縮小実施が9月以降に持ち越しとなれば、「米10年債利回りは2.6%へ回帰する」とシミュレーションしていました。BNPパリバは12月のQE縮小を予想する慎重派なだけに、サマーズ氏が率いるFRBへの未来にも非常に注意深い眼差しで見つめていることが分かります。

QE縮小を9月と予想するバークレイズも、サマーズ氏が選出された場合の「ボラ・米債利回り上昇」を見込んでいるんですよね。ウォールストリートは秋を迎えるにあたって、よっぽどサマーズの名前を聞きたくないようです。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2013年9月5日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。