同年代の官僚が留学帰りで辞めていくわけだが…… --- うさみ のりや

アゴラ

官僚時代の同年代がそろそろ留学から戻ってきているのだけれど、ちらほらそのまま転職したり起業したりする人が出てきている。ちなみに経済産業省のことを言うと僕らの代は入省時には事務官、技官あわせて39人いたわけだけれど、多分転職が10人の大台にのって、同期キャリア組が30人を切ったんじゃ無いかと思う。(その分数人二種からキャリアへの抜擢が行われている。)

別にどういうキャリアを歩もうが人の自由なのだけれど、やっぱり国費留学でハーバードやらコロンビアやらに行ってその直後に外資金融やらコンサルやらに転職するのは 「いかがなものか」と感じてしまう。とはいえ「やる気も無いのに続けろ」というわけにはいかないし、彼ら留学ー転職組の言う「このまま官僚続けても日本にも自分のキャリアにも明るい展望が見えないと留学に行って感じた」という理屈も分からないでも無い。それでも「留学すんなら辞めんなよ」という心の底のもやもやは消えない。

2010-06-10-133346

特に何人かに関しては「始めからステップアップの過程として官僚という仕事を選んだのではないか」という気がする。

①東大に入る

②官僚になって国のために働いたという一応の実績を作る

③留学にいって世界を見て箔を付ける

④「日本はこのままじゃダメだ」と言い残して官庁を去り、外資金融または外資コンサル等の高給で箔がつく仕事に就くとともに公務員という職歴をロンダリングする

⑤数年働いた後、華麗な人脈を作りグローバルマッチョ化して無国籍に活動を始めた上で、日本を睥睨して「これだから日本はダメだ。世界は~」とか偉そうに講釈を垂れる

こんなキャリアプランを始めから描いて官庁に入省してきたんじゃないかという気がする。じゃそれを批判すれば何か解決するのか、というと今の官庁には留学という餌がないといい人材が集まらなくなってきているのも事実な訳で、問題はもっと根本的なところにあるような気がする。ちなみに私自身も、多分「国費留学できる」という可能性が無ければ官庁に入ることは無かったように思う。結局留学する前に辞めてしまったけれど(笑)誰が留学というメリットも無く就職の際に、他の魅力的な選択肢の中から好き好んで安月給でサービス残業三昧で世間からの猛批判にさらされるような仕事をしたがるのか、という話だ。官僚時代に世論対策として先輩がみのもんた氏に政策を説明してボロクソにいちゃもんつけられて帰ってきた姿を見て、なんとも言えない気になったことを思い出す。

もちろん官僚の仕事はやりがいがあるし、大きな成果を成し遂げれば深い充実感を味わえるのは間違いないのだけれど、それは他の仕事にも言えることなので官僚という仕事が他の仕事に比べて特別にやりがいがある 、というわけではないように思える。むしろ大部分の官僚は「やりがいがあるからこの道を歩んだんだ」と必死に自分に言い聞かせて、なんとか「転職してこの場を離れたい」という思いと精神バランスを保っているように見える。つまり現状肯定の理屈なんだろうと思う。復興庁の参事官じゃないけど、めちゃくちゃな理屈で人間の屑のようになじられたことをちょっとtwitterで匿名で愚痴ったら、背景まで調べ上げられて特定され、日本全国からたたかれるような仕事ですからね。そうでも自分に言い聞かせないと続けられない。

若くして辞めてプラプラしているという自分の立場がら、月に一度は「官僚を辞めるかどうか迷っている」という相談を若手官僚から受けるので、私の情報源は相当偏っているかもしれないが、少なくとも一定数の官僚がそんな思いで働いているというのは世の中の人がもう少し知っておいても良いのではないかと思ってこんなとりとめの無い記事を書いてみた。ちなみにこういうことを書くと「だったら留学制度自体をなくせ」という主張をする人もいるけれど、それでは外交交渉人材がいなくなって国益を損なうだけなのであしからず。

「民間の力を使えば良い」という批判も上に述べたような官庁の労働条件の悪さやその後の転職の不自由さから、海外の一流大学を出たようなピカピカのキャリアを持った人が官庁で働きたがるなんていうことはかなりレアなケースなので少なくとも現状では機能しないことを前もって言っておく。外交交渉人材は自前で育てた方が日本では安上がりなので、国費留学制度を色々問題はありながらも続けていることをご理解くださいませ。。。官庁辞めた自分が言うのも変だけれど。

そうすると結局今の官庁の人事政策にできることは「国費留学」という餌をちらつかせて有望な若者に入省を促し、その過程でやりがいのある仕事を断続的に与え続けてなんとか「転職ーグローバルマッチョへの道」を歩ませないよう引き止めることしか無いのではないか、というのが自分の中の結論だ。なので、どうか政治家の方はそういった実情を踏まえた上で国家公務員制度改革に取り組んでほしいと思う。少なくとも、自分の点数稼ぎに意味が判然としない質問主意書を連発したり、質問の提出を故意に深夜までに引き延ばすようなことはそろそろ本当に辞めるべき時代が来ているとは思う。

ではでは今日はこの辺で。


編集部より:このブログは「うさみのりやのブログ」2013年9月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はうさみのりやのブログをご覧ください。