グレートローテーション、日本語で大転換と訳されるこの言葉は比較的最近になって使われるようになりました。意味は「世界のマネーが安全資産からリスク資産へと『歴史的な資金移動が起こる』という期待が込められた言葉」(金融経済用語集)でいわゆるリスクオフからリスクオンに転換することを言います。具体的には債券など低い利回りながら安全といわれる資産から株式などへ資金が大きく長期的な波動の中で起きることと考えてよいかと思います。
専門家はこのグレートローテーションが起きつつある、と見ています。私も同感です。
地球儀を見渡し、経済や政治や社会問題を俯瞰するとアメリカはリーマン・ショックからだいぶ健康状態が回復し、その間、シェールガス革命が起き、住宅市場も堅調に回復基調を辿っています。欧州はPIGGSを震源とする金融危機でもがき、苦しみ、ユーロ解体説すら大きく議論された中でドイツ、メルケル首相と欧州中央銀行のマリオ・ドラギ総裁の辣腕ぶりで底打ちの気配が濃厚となってきています。
日本は民主党政権下で我慢を強いられ、震災、原発という大事件を抱えました。数十年後に歴史を振り返れば「陰の極」だったと言われる可能性の強い最悪期でした。そこから政権交代、アベノミクス、オリンピックなどで大きく変革していく中で株価は順調に回復基調を維持し、日本が明るくなりつつあることに疑いの余地はないでしょう。
いわゆる波動や循環という考え方は経済学を学んだ方ならば大学1年の時に出てくる基本的事項でありますが、これは経済学に限らず西洋占星術など占いの世界でも12年前後で一巡するとか最悪期や最良期は数年という見方をすることが多いと思います。
たとえば経済の世界でなぜ循環するのか、ごく簡単な例を取り上げるとアメリカの自動車の売り上げがわかりやすいでしょう。2006年ごろまでは年間1600万台以上売れていた自動車はリーマン・ショックで一気にしぼみ、2009年に至っては1000万台という最悪の記録となっています。ですが、当時から私はある確信がありました。自動車は耐久消費財で国民は古い車を乗り続けることにいつかは我慢できなくなり、買い替えざるを得ないがそれは社会のムードが変わっていくことできっかけが起きる、と考えていました。
事実、経済は着実に回復し、人々の病んだ気持ちは癒され、2013年は楽に1500万台を越える水準になり、堅調な回復振りとなっていますが、これも循環のひとつなのです。そして、そこには車の耐用年数から導き出すというより行動経済学で説明できるような「きっかけ」が大きな起爆剤となるのです。
日本の場合、アベノミクス、特に成長戦略についてややがっかりしたというトーンが多いのですが、安倍首相が就任してから作り上げた全体のプランを並べてみれば今までの首相ではやり遂げられないことばかりがずらりと並んでいます。これはまさに起爆剤であり、オリンピックは更に長期的目標を設定したという点でマインド変化が促進することになると見ています。
デフレに関しても個人所得の減少という現実問題もありましたが、社会のトーンが高額支出を必ずしも良しとしないムードがあり、企業はより安く、を追及した悪循環でありました。今、高額マンションが売れ、高級腕時計が売れ、デパートに活気が戻ってきたことを見ても高品質が大好きな日本人はより支出に向かっていくと考えてよいと思います。
これは長いトレンドを形成しますので日本もグレートローテーションをしたと考えてよいと思います。
勿論、世界を見渡せば気になる事象はいくつかあります。インド、インドネシア、トルコなど新興国の経済は今後、コントローラブルなのか、中国は数十年分の内需を先食いした今、国内問題をうまく解決し、世界の消費のリーダーとなれるのか等きりはありません。
ですが、ここはネガティブにとるよりポジティブに進んでいった方が出遅れない気がいたします。マインドはそう簡単には変わりません。私はそう確信しています。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年9月20日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。