金融庁が辞めキャリアを再任用したことで話題になっています。
○金融庁、元キャリア官僚を再雇用(http://www.sankeibiz.jp/compliance/news/130919/bsh1309190502002-n1.htm)
対象となった堀本サンは(東大ーハーバードー世銀ー金融監督・検査局ー総務企画局)と経歴を見るにどう見てもエース中のエースで本物のグローバルマッチョだったので、そもそも金融庁としては堀本サンに辞められたことがイレギュラーだったと推測されます。辞めた人が戻ってきて突然幹部に着くとなると多少なりとも反感を覚えるのが組織文化というものだと思うのですが、堀本氏はそれを超越した存在で、出戻りといえども省内では異論が無かったのでしょう。
ではこういった動きが各省庁に広がっていくか、というと今のところそうは思えなくて、そもそも金融庁という役所自体が積極的に民間から検査のエキスパートを採用する特殊な役所であったので、このような人事が成立したのだと思われます。(実際のところ金融庁の検査担当はエキスパートというより元銀行マンが銀行に復讐する職場になっているとの噂もありますが。)逆に言えばこうした動きが広まるには、他の役所の規制部門も金融庁のような形に変わっていく必要があると感じるわけです。
ドラマに成るくらいですから金融庁は銀行業界から忌み嫌われる存在です。。。が、大蔵省時代は「護送船団」と呼ばれるほど銀行とお役所はズブズブだったわけで、たった20年で銀行と役所の関係は大きく変わったわけです。裏でお互いに情報をこっそり伝え合って政治的な落としどころを考えるなぁなぁな関係から、監査官庁と事業者の一線を引いた関係に変化した。結果としてお互いの内情を知るために、官の人材を民が求め、民の人材を官が求める、という関係に変化して情報の流動と人材の流動がセットで行われるようになったというところでしょうか。
こういった関係は、現在問題になっているエネルギー業界と官庁との関係においても大変参考に成るような気がします。今までは電力業界とその所管官庁である経済産業省、さらには自民党・民主党と言った政党は持ちつ持たれつで、互いの顔色を見ながら利益配分をする関係でやってきましたが、これからは襟を正した殺伐とした関係に徐々に転換していく必要があるんだと思います。そうすることで情報の移動と人の移動が連動するようになり、電力業界内で、また電力業界と規制当局(現状で言えば資源エネルギー庁)との間で回転ドアのように人が行き来する時代がくるのだと思います。ちなみにかつてこういった改革に現実に取り組もうとした村田成二という事務次官もいたのですが、まだ時代は早く彼は敗れ去ることに成りました。(http://globe.asahi.com/movers_shakers/091005/01_01.html)
現在の経済産業省は電力部門もローテーション人事の一環としてあてがわれているわけですが、それでは電力会社の担当に比べれば現場感覚が全然足りなくて、とても監督できるような状況では無かったように思えます。経済産業省時代を振り返ってみてもエネ庁の職員の人たちは、「ずっと電力一筋でやってきてた東電のエースにはローテーションの俺たちは勝てない。立法論だけがよりどころ。」とぼやいていました。これからはそういった電力会社の専門家が(出向という形ではなく)規制当局にいったり、地域独占の横の関係を超えて職場を変えたり、といったように労働力として流動化していくことが健全な行政のためにも必要なんだろうと思います。そういう動きの中で、今回の例のように役所から民間の立場に鞍替えしてまた役所に戻るようなキャリアパスも開けていくのでしょう。現在のキャリア制度が行き詰まっていることは内部で働いている、特に若手、が一番痛感していることですから、こういったキャリアパスの多様化に向けた変化は大いに歓迎されるはずです。
なんだか面白みがない内容なので最後に少し毒をはいておきますと、村田成二元次官が職を賭して取り組もうとした改革を、古賀茂明氏が「オレがシカケタんだぜ」と得意げにメディアで吹聴している姿はなんだかむかつきます。そういうのはテレビの前ではなくて、キャバクラのお姉ちゃんの前でやって「きゃーすごーいすごーい」と言ってもらってください。
ではでは今回はこの辺で。
編集部より:このブログは「うさみのりやのブログ」2013年9月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はうさみのりやのブログをご覧ください。