オーストリアのペンクラブは中国の「孔子学院」(Konfuzius Insutitute)が主要スポンサーとなっている。そのためというべきか、中国の人権蹂躙問題に対して批判を避け、同国の反体制派活動家や芸術家に対しては冷たい扱いをしてきた。オーストリア高級紙プレッセ9月20日付に同国の作家ミヒャエル・アモン氏が寄稿している。以下は同氏の寄稿の概要だ。
▲ウィーン大学キャンパス内にある「孔子学院」(2013年9月21日、撮影)
オーストリアのペンクラブは2年前、財政危機で運営ができなくなった。中国の孔子学院がスポンサーとなって以来、破産からは解放されたが、親中派路線がここにきて鮮明化してきた。それに対し、メンバーからペンクラブの精神から逸脱してきたという声が上がってきたという。
ペンクラブは言論の自由、人権の尊重などをその創設趣旨の中に明記しているが、孔子学院がスポンサーとなって以来、中国の人権問題には沈黙。その親中路線の中心人物はオーストリア・ペンクラブの幹部メンバー、中国学者ヴォルフガング・クービン氏だ。北京で教鞭を持つ同氏に対し、亡命中国人グループからは「中国共産党政権の宣伝工作の欧州の中心人物だ」という声が聞かれる。ちなみに、オーストリアのペンクラブ会長が最近北京を2週間余り訪問したが、その旅費がどこから出ているかは明らかになっていない。
例えば、政権批判で逮捕され、米国に追放された作家Bei Ling氏はフランクフルト・ブックフェア(2011年)への参加を阻止され、ロンドンのブックフェア(12年)には政権派作家だけが参加を許されたことがあった。それに対し、クービン氏は「Bei Ling氏は自称反体制派に過ぎない」と一蹴している。
英国の作家サルマン・ラシュディ氏は最近、2010年ノーベル平和賞を受賞した著作家の劉暁波(Liu Xiaobu)氏の処遇を懸念する記事を英紙ガーディアンやタイムズに寄稿したが、クービン氏は「中国では劉暁波氏のことを誰も知らない。中国国民は別の問題を抱えている。すなわち、生存だ」と述べている。
国際アムネスティ(AI)や国際ペンクラブは劉暁波氏の人権擁護を訴えているが、クービン氏は「中国では著作活動を理由に刑務所に入るということはない」と主張し、AIとの協調を拒否している、といった具合だ。
中国共産党政権は欧州では動物園へパンダを贈る一方、孔子学院の拡大を主要戦略としている。孔子学院は2004年、海外の大学や教育機関と提携し、中国語や中国文化の普及、中国との友好関係醸成を目的とした公的機関だが、実際は一種の情報機関となっている。
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のクリストファー・ヒュース教授は「孔子学院は中国当局の宣伝機関だ」と断言するなど、欧州知識人の間では孔子学院の拡大に懸念の声が高まってきている。カナダ安全情報局は孔子学院の活動に警戒を呼び掛けているほどだ。
編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2013年9月26日の記事を転載させていただきました。
オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。