宮崎のシーガイアに来ています。とある金融機関の研修で、資産運用について80分の講演をすることになりました。700名の方の前でお話します。大きなコンベンションホールの高い壇上の上に立ち、巨大スクリーンが3つ。音楽と共に登場という演出もあるようです。
私が最初にこのように知らない人の前に立って話をしたのは、確か13年前の2000年だったと思います。早稲田大学オープンカレッジで授業をした時ですが、今でもその時の緊張感ははっきり記憶に残っています。
あれから13年。週に1回ペースとしても恐らく500回以上の講演をやってきたはずです。少ない時はほんの数名から大きな会場では3000名まで。場数をこなすと共に緊張感は無くなっていきました。それと同時に自分の中でのマインドセットの変化が話し方を大きく変えたように思います。
それは、何のために講演をやっているのかという自分の気持ちの持ち方です。
最初に緊張しながら講演していた時は、とにかく失敗しないように、時間配分を間違えないように、ということばかり考えていました。つまり、自分にとってマイナスにならないようにしようという意識が前面に立っていたのです。自分が第一です。
ところが、徐々に緊張しないで話ができるようになってくると、そんな意識が段々と無くなり、むしろせっかく人前で話す機会を頂いたのだから、自分が持っている価値をできるだけ凝縮して伝えて持って帰ってもらおうという気持ちになってきました。
そうすると、毎回の講演で自分は聞きに来てくれた人に何を話せば一番感謝してもらえるか、満足してもらえるかを考えるようになりました。相手の視点が入ってきたのです。
与えられたレジュメや決められたスライドを事前に決めた完璧な時間配分でこなしていくのではなく、話をしながら聞き手の人たちの反応を見て、その場で臨機応変に内容を調整していく。練習したことの再現ではなく、その瞬間に一番良いと思うものを提供していくという方法です。
心の余裕が出来てきたことで、「自分のため」から「相手のため」にマインドセットが変わる。それによって、講演をすることがより楽しくなってきました。
相手の視点を持つことの大切さは講演に限らないと思います。
通常の仕事でも、自分の手柄にした、自分の組織のメリットにしたい、あるいは自分が失敗したくない、自分が恰好悪いところを見せたくない、という仕事のやり方では、周囲の人は白けるばかりです。そうではなく、一緒にやっているプロジェクトを成功させたい、他のメンバーの人たちにメリットのある方法を提案したいといった「相手のため」を最初に持ってくることで、雰囲気が変わってきます。
仕事とは、相手のために何かをすることによって、その感謝の印をお金という価値で頂く行為と定義することができます。だから自分のことを考える前に相手を考えることは仕事の基本なのです。
しかし、そんな気持ちをどんな時でも常に持ち続けられる人はあまりいません。多くの人は自分の立場が悪くなると、自分の視点に戻ってしまう。だから、環境に関わらず一貫して相手のことを考えられる人。それが仕事のできる人と言えるのではなのではないかと思います。
今日の講演は9時からです。お会いする皆さまが何を求めているかを想像しながら、自分が伝えたいメッセージをわかりやすく、丁寧に伝えていきたいと思います。
編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2013年10月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。