アメリカ政府機関の閉鎖から15日目、債務上限の到達まで残すところあと2日。相も変わらず行ったり、来たり、すれ違い~♪ あれだけ「楽観的」を連呼していた米上下院、両党指導部の声は結局、キャピトル・ヒルの虚空に響き渡るのみ……。
ざっと本日の動きを振り返ってみましょう。
共和党は本日、午前中に米下院・共和党を集めた会合で米上院と同じく1)2014年1月15日までの予算を確保(政府機関の閉鎖を解除)、2)2月7日まで債務上限引き上げ──を狙うとされていました。これに医療保険改革法案を修正し医療保険機器への課税を2年先送り、議員や正副大統領および閣僚の医療保険への政府からの拠出金の停止を盛り込もうとしていたんです。
会合後、NY時間午前10時半過ぎから行った会見でベイナー米下院議長(共和党、オハイオ州)は、米上院の提案へ攻撃を緩めず、「手榴弾そのものだ」と批判。「今日中に」採決へ向けた前進を模索すると述べつつ、右派取り込みへの不安からか「米下院でどのように協議を進展させるか未定」とも明かし、楽観度を後退させました。
事態打開への希望の光がきらめいたのが、ヌーネス議員(共和党、カリフォルニア州)のコメント。同議員は「本日の債務上限引き上げなどで採決が可能」とはっきり述べただけでなく、債務上限引き上げ案などの修正を明らかにしました。
従来は
1)2014年1月15日までの予算を確保(政府機関の閉鎖を解除)
2)2月7日まで債務上限引き上げ
3)付帯条件として医療保険改革法に加えた2ヵ所の修正
といった内容でした。
修正案では、予算確保の時期を14年1月15日から13年12月15日へ1ヵ月短縮し、医療機器課税の2年間先送りも削除していました。民主党と共和党の主張の折衷案で折り合う期待が高まったんです。
一転して夜の帳が下り始めた午後7時頃、米下院の共和党は「採決中止」を決定しました。理由は簡単。右派が引き続き、医療保険改革法案の修正を執拗に迫ったからです。再び交渉へのボールは、米上院に渡されました。
米上院での民主・共和党の本日の協議はというと。
米上院は、いったん協議を中止したんです、ディック・ダービン議員(民主党、イリノイ州)がNY時間午後2時半頃に明らかにし、ダイアン・ファインスタイン議員(民主党、カリフォルニア州)にいたってはブルームバーグTVにて「(交渉は)決裂した」と発言しました。他複数の米上院も同様のコメントが聞かれ、ダウ平均は50ドル安付近から一時100ドル以上へ下げ幅を広げたんです。もっとも、リード米上院内総務の広報担当は「交渉は決裂していない」と表明。米下院の案が「不成立となってから、再度上院で合意を目指す」方針と強調していました。人騒がせも甚だしい……。
予算協議以外とはいえ、米上院で正しかったのはリード米上院院内総務(民主党、ネバダ州)だけでした。午前中の段階でこんなことを予言し、的中させてたんです──「今夜中に格付け会社が格下げに踏み切る可能性がある」。この発言は、CNBCのツィッターで伝えられました。
その日のNY株式市場引け後から約50分後。真っ赤なヘッドラインで、フィッチが米国の「AAA」格付けにつき「ネガティブ・ウォッチ」に指定した、との文字が飛び込んできたんです。格下げの可能性を点灯させたると同時に、2013年の米国内総生産(GDP)見通しも従来の1.9%増から1.6%増、14年GDPも従来の2.8%増から2.6%増へ引き下げました。
2011年当時はS&P、今回はフィッチが米議会こう着に赤信号。
フィッチの格下げ警告、共和党が過半数を有する米下院では「やるやる詐欺」のごとく採決が見送られましたが、米上院はリード院内総務とマコネル院内総務(共和党、ケンタッキー州)が電話で協議再開を確認して動き始めています。時計の針は着実にタイムリミットの17日へ進んでおり、早急の合意が求められています。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2013年10月16日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。