遅れてやってきた米9月雇用統計で、QE縮小メドは3月に --- 安田 佐和子

アゴラ

政府機関の閉鎖を経て、ようやく発表されました米9月雇用統計。おかげ様で、米株高・米債高・ドル安の展開でニューヨーク市場は取引を終えています。気になる内容はといいますと……。

米9月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比14.8万人増と、市場予想の18.0万人増より弱い結果となった。前月の19.3万人増(16.9万人増から上方修正)を下回り、バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長が失業率低下のメドとする増加ペースの「15万人増」もわずかに届かなかった。

NFPの内訳をみると、民間就労者数が12.6万人増となり市場予想の18.0万人増より弱い。特にサービスの伸びが鈍化し、前月の16.1万人増(15.2万人増から上方修正)を下回っている。2桁増トレンドは15ヵ月連続ながら、2012年6月以来の低水準を示現した7月の10万人に近い数字にとどまった。

時間当たり平均の労働賃金は、市場予想の0.2%より弱い前月比0.1%上昇の24.09ドル。2ヵ月連続で上昇したとはいえ、前月の0.3%(0.2%から下方修正)には一歩及ばなかった。前年比は、市場予想通り2.1%の上昇。2011年7月以来の高水準に並んだ前月の2.3%(2.2%から上方修正)以下となる。週当たりの平均労働時間は、市場予想と前月と一致し34.5時間。製造業も、前月と同じく40.8時間だった。

→政府機関の閉鎖以前で1)雇用の伸び鈍化、2)賃金の伸びは小幅、3)労働時間は変わらず──という結果に終わっています。いかにも生ぬる~い回復の途上にあることを確認しただけですね。

失業率は、市場予想および前月の7.3%より強い7.2%。2008年11月以来の7%割れを視野に入れている。失業者数が前月比6.1万人減と3ヵ月連続で減少しつつ、就業者数が13.3万人増と前月から反発していた。労働参加率は、前月と同じく63.2%と1979年以来の低水準を維持し、雇用率も前月と同じく58.6%。平均失業期間は、5ヵ月ぶりの水準へ延びた前月の37.7日から36.9日へ短縮した。一方で、経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている失業率は前月の13.7%から13.6%へ低下した。

→労働参加率が下げ止まり失業者が減って雇用者が増えるという好循環を示しました。平均失業期間や経済的要因でパートタイムを余儀なく割れている失業率も、小幅改善。ただし10月16日まで続いた政府機関の閉鎖などで、10月以降の家計調査が順調な回復を維持するかは不透明です。

回復ペース、10月には足踏み状態に陥ったりして。

エコノミストの見方はといいますと。

バークレイズのマイケル・ギャピン米エコノミスト

今回の結果を受け、量的緩和(QE)の縮小予想を従来の12月から14年3月へ修正した。合わせてQE終了の時期も14年6月から14年9月へ変更する。バーナンキFRB議長率いる米連邦公開市場委員会(FOMC)は数値目標としての失業率だけでなく、9月のFOMC声明文で経済指標を重視する姿勢を打ち出していた。財政政策と政府機関の閉鎖もたらした予算交渉など経済の重しが完全に払拭され、活発な雇用の増加を確認するまでテーパリングを手控える見通しだ。また政府機関の閉鎖の影響、FRB議長の交代も、Fedが様子見を決め込む要因とみる。なお第一弾の利上げは、2015年6月で維持する。

BNPパリバのジュリア・コロナド米国担当主席エコノミスト

3ヵ月平均のNFPは14.3万人増と、足元のピークを示現した2月当時の23.3万人増だけでなく8月当時の15.1万人増も下回った。自動車工場の閉鎖や娯楽・宿泊など季節要因で数字が変動しやすかったとはいえ、全体的に勢いが失われた感は否めない。特に娯楽・宿泊と(医療保険改革法案の影響もあって)ヘルスケアが顕著だ。賃金の伸びも2%付近で上振れのサインを示さなかった。当方が予想したように、9月にQE見送りを選んだFedは慎重スタンスを貫くだろう。従来通り、QE縮小時期の見通しを14年3月で据え置く。

→バークレイズは、年内QE縮小ナシと見通しを変更してきました。9月QE縮小見送りをズバリ当てたBNPパリバは、予想を変えておりません。

雇用統計後、市場関係者の気持ちを言い表すならこれがピッタリではないかと。

米雇用統計をはじめ米経済指標が政府機関の閉鎖の雑音を反映してしまう事情も、考慮しなければいけません。ムーディーズ・アナリティクスのマーク・ザンディ主席エコノミストは、CNBCで「NFPは10月に10万人増といった弱い数字が出たと思ったら、11月は逆に20万人増へ強含むなど変動が激しくなるだろう」と予想。はたして12月はというと、「あらためて予算協議の行き詰まりに直面する公算が大きい」というわけで、労働市場が改善する期待値は低いんです。

こうなると、2014年3月までQE縮小はお預けと予想される方が増えてもいたし方ございませんね。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2013年10月23日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。