内部告発に組織はどう対処すべきか

アゴラ編集部

これまで「優良企業」と言われてきた企業の不祥事が相次いでいます。東京ディズニーリゾート系列のホテル、プリンスホテル、阪急阪神ホテルズ、リッツ・カールトン大阪、といった「一流ホテル」のみならず、今度はクロネコヤマトのヤマト運輸が「クール宅急便」の荷物を常温で放置していた問題が明らかになりました。先日、老舗出版社の秋田書店の編集者が、読者プレゼントの偽装問題を内部告発して話題になったんだが、当コーナーで上げさせてもらった「ぴあが『ももクロ』本で詐欺まがい」の件も内部告発が発端になって発覚。また、クール宅急便放置問題も、内部から出た動画をもとにして報道にいたったようです。


米国の「敵」になったエドワード・スノーデン氏も元CIA職員で、国家による盗聴を内部告発で暴露して一躍、刻の人になりました。国家にとってスノーデン氏のような人物は、まさに「獅子身中の虫」。国民の知る権利と天秤にかけても国家機密は守らねば、というのが基本的な態度です。安倍政権は、この臨時国会で「特定秘密の保護に関する法律案」を成立させようと画策しているわけなんだが、この法案が制定されると公務員の守秘漏洩が厳罰化され、内部告発などをしにくくなる、と危惧する人も多い。そうした空気を読んだのか、政府内からは「違法を告発した公務員は罰しない」という声も聞かれます。

しかし、いったいナニが「違法」なのか、誰が「違法」と判断するのか、そのあたりについては曖昧にしておき、断言はしないでしょう。「公共の利益」と判断されれば、黒いカラスも白になる司法制度です。恣意的に運用されるのが見え見えなのに、これで内部告発者は守られる、と考えるお人好しはいません。

何かと後ろ暗い企業にとって「内部告発」は大きな脅威です。公明正大清廉潔白と胸を張る企業にしても、単なる逆恨みで効果的にネガキャンを貼られたら企業価値の毀損につながりかねません。いったんネット上へ出されて拡散したら、広告宣伝費を使ったマスコミ対策も効果はない。そのために内部調査の組織を作り、従業員の監視を強める企業も多いようです。

現在では「公益通報者保護法」という内部告発者を守る法律があり、限定的ながら企業から告発者への制裁は禁じられています。しかし、同法施行後もトヨタ系列の販売会社やオリンパスなどで報復人事が行われたりしている。「内部告発」と言えば、2010年に海上保安庁の保安官が尖閣諸島での中国船舶との衝突事件動画をネット上へ公開させたことで英雄視されました。逆に、たとえ違法なことでも外部へ漏らせば、組織の「和」を乱す悪者にされてしまうこともよくあります。

やはり、企業にせよ役所にせよ、常にトップが白黒をはっきりさせ、日頃から違法行為には決然とした態度で臨むなど、広い意味でのコンプライアンスこそが組織をより良くしていく、という意識をしっかり持つことでしょう。何か問題があるからこそ内部告発者が出るんだが、公明正大清廉潔白な組織としての自信があるのなら仮に出ても堂々としておればいい。仮に問題があれば「自浄能力」を試す、いいきっかけになります。内部告発を監視するのなら、臭いものに蓋で抑え込まない。一歩進んでその兆候をつかみ、告発されそうな問題を事前に把握する。そして、問題解決の手段や第三者調査の実行などを自ら発表し、内部告発者の機先を制し、的確適正に対処することが大事だと思います。

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特定秘密保護法「知る権利」「報道の自由」を考えよう


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アゴラ編集部:石田 雅彦