秋葉原を数年ぶりに訪れたのはいつの時でしたでしょうか。気がついたら、中央通りの裏手にはUDXビルやダイビルが軒を連ね、まだ一度も行ってませんが、ガンダム・カフェがオープンしたと思ったら隣にAKBカフェまでオープンして、アキバデパートはすっかり綺麗なお洒落ビルに様変わりし、思い出深いラジオ会館は新たに生まれ変わり、遂にはヨドバシカメラまでオープンして久しいですね。
正直な話、昔アキバで働いていた、遊びに来ていた身としては、「アキバってんこんなに綺麗な街だったっけ?」ってのが素直な感想で、そこに非常な違和感を持つわけなんですよね。
ガレージキットやフィギュアの草分け「海洋堂」宮脇修一社長の週刊ダイヤモンドでのインタビューの言葉を引用すると、
今、駅の北側のほうに「クロスフィールド」とかガラス張りできれいなビルができとるじゃないですか。あんな小綺麗な街なんかね、オタクが好きなわけはないんですよ。“クール”な店とか、そういうとこはクソ食らえなわけですよ。
そうじゃなくて猥雑な感じというか、狭くてぎゅうぎゅう詰めになってるところが、よさなんです。」 って言葉に集約されてる気がするんですよね。
でも、オサレ化する一方で、中央通りの反対側の路地裏には、あの頃は2~3店舗あるかどうかだったメイド喫茶が雨後の竹の子のように乱立してるらしく、中央通りや裏通りには客引きのメイドさんが一個石を投げれば5~6人に当たりかねない勢いで、一瞬何処の風俗街かと勘違いするくらいだ(苦笑)。
まあ、かく言う私も偉そうなことも言えずに、某有名メイド喫茶の一時常連で、「美味しくなぁれ、萌え萌えキューン♥」とかやってたんですけどね(笑)。
中央通りにかぎらず、昔と変わったのは、ゲームショップや同人誌専門店の店頭に、露骨なエロエロ立て看板等の類が姿を消した気がすることでしょうか。
これは単に、エロゲーに関して言えば、エロゲーのコンシューマ化(家庭用ゲームソフト)がここ10年くらいで格段に進み、事情を知らない人からすれば、どれがエロゲーでどれがソフトなコンシューマソフトか区別がつかないってのが本音ですかね(苦笑)。最近は、アニメとのタイアップもあるので、どれがどれやらってのもありますしね。
今や、アキバでのエロ同人誌専門店と言えば、”とらのあな”と”メロンブックス”に集約してる感があり、”とらのあな”はすっかりと立派なビルが二つもあり、エロ同人誌は置いてないけど何故かBL同人誌(ボーイズラブ系は置いている)は置いてあるアニメイトが目と鼻の先にあるのも、「なんかとらのあなも立派になったなぁ」と感心するオッサン世代です。
そして何より、ここ10年でのアキバの最大の進歩は、”飯食うところが爆発的に増えた”ことでしょうかね。
『孤独のグルメ』のゴローさんが今のアキバに訪れたらどんな感想を抱くのでしょうか(スミマセン、忙しすぎてあんまりドラマの方見れませんでした)。
所謂、”二郎系”ラーメン屋も出来て、一遍行ってみたいんですが、いつも行列なんで気がひけるんですよね。私、待つのが嫌いですし。どちらかと言えば、アキバに来ると朝昼兼ねて駅前の『やすべえ』で特盛りのつけ麺を食べるのがマイパターンですが、無駄情報ですね。あとはUDXビル内のお好み焼き『ゆかり』もホントに美味しいですね。ここなら多少待つのも我慢できます。
アキバといえばAKB48の話は、切って離せないことですが、昔はアキバの地下アイドルの中の一グループ(とは言え、プロデューサーが大物すぎるが)だったのが、いつの間にか”国民的アイドルグループ”になっていて、特に興味のない私ですら困惑する部分もある。
その一方で、ダイビルの影に80年代のアイドルの親衛隊みたいな、AKBのメンバーの名前の刺繍が入った特攻服の一団を見た時には、不思議と微笑ましくなった。
そうして変化を繰り返すアキバの街だが、悲しいかな嘗ての”PCの街”、”家電の街”としての顔は自然消滅に近い状態で、大手のPC専門店も、次々と閉店し、裏通りの通好みのパーツショップもかなり消えて悲しい限りだ。
実際、今私が使っている自作PCも、気がつけば売っていたお店が潰れて別のPCショップに変わってるのも時代を感じてしまう。
とは言え、中身はその別のショップで買ったパーツに丸ごと入れ替わってる訳だが。
先に引用した、海洋堂宮脇社長のインタビューではないが、オタクのライト化に伴って、見た目はオシャレな街に変わりつつ、エロ同人誌や美少女フィギュアやエロゲーを買う行為が、どこか後ろめたかった頃とは変わり(勿論、抵抗のない人も居るだろうが)、それすらがファッションの一部のような、今のアキバの街にはやはり違和感を覚えてしまうのは、私の世代のオタクが、あの”神戸児童殺傷事件”での激しい”オタクバッシング”の氷河期を超える冬の時代を経験してるからなのだろうか?
なんて昔話をすると、『げんしけん』単行本特典の公式同人誌の篠房六郎先生のように、「宮崎勤ってよく知らないんですけど…」とかジェネレーションギャップで苦しむハメになるのだろうが。
そういえば、美少女フィギュアがいつの間にか、離型剤落としや組み立て塗装の必要性が無くなった完成品のクオリティの高いモノや、家庭用の美少女ゲームと18禁エロゲーの境目がパッと見分かり難くなったのも、オタクのライト化というか、ハードルを下げたことに拍車をかけたのかもしれない。
SEGAドリームキャストの自虐的ゲーム『セガガガ』の挿入歌ではないが、秋葉原は”オタクの聖地”であり”電子の魔都(みやこ)”であり、カオスな街で在り続けて欲しい。間違っても”ライトオタクの聖地”や”日本のポップカルチャーの中心地”なんて生っちょろい街になって欲しくはないが、時代の流れは残酷に進んで行き続けるのだろう。
”進化を続ける街”と言われて久しい秋葉原だが、どうか願わくば、これからのアキバが私にとって、ヨドバシカメラとまんだらけコンプレックスと、とらのあなとドスパラパーツ館と、やすべえとゆかりに行くためだけの街になって欲しくはない。
それと一度くらいは行列に我慢して、ガンダム・カフェに行かないとね。お台場のガンダム・カフェには行ったけど。やっぱり並ぶの嫌だから、やすべえ行こうっと。特盛りつけ麺食べに(笑)。 あと、絶版にならない内に『シュタインズ・ゲート』のラジオ会館プラモを買っておかないとね!
多田 純也
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