最近、中国ではスマートTVがはやっているそうです。スマートTVというと特別な技術みたいですが、要するにインターネットを使った放送で、ニコニコ生放送だってスマートTVです。しかし日本では、スマートTVはほとんど普及しません。それはテレビ局が著作権にうるさく、ネット経由の放送を禁止しているからです。
しかし著作権って何でしょうか。それは自分の著作物のコピーを禁止する権利です。これをよく「知的財産権」という人がいますが、著作権は財産権とはまったく違います。たとえば私のもっている本(財産)を誰かが盗むと私は本を読めなくなりますが、その本をコピーしても私は困りません。
財産権を守ることは、とても大事です。昔は王様や殿様が勝手に人々の財産を取り上げることができたので、人々はいくら働いても豊かになれませんでした。財産権は、国家から人々の自由を守る自由権として、多くの戦いや革命の中で勝ち取られてきた権利です。
しかし著作権(コピーライト)は、もとは印刷業者の独占権として18世紀にできたものです。これは他人がコピーする自由を奪う権利ですから、むしろ表現の自由を侵害するものです。これを「人格権」などという人がいますが、著作物に人格なんかありません。著作権は、経済的な利益を守る権利なのです。
私の本を友達がコピーしても私は困りませんが、スキャンして世の中にたくさんばらまくと本が売れなくなり、出版社は困ります。そこでコピーを禁止して利益を守るのが著作権の目的です。しかしインターネットのような電子メディアでは、他の記事をコピーして自分の記事を書いたりするのは当たり前で、コピーを禁止すると新しい創作がむずかしくなります。
つまり著作権は、既存の表現は守るが新しい表現を妨害するのです。グーグルも初期にはたくさん訴訟が起こされて大変でしたが、結果的にはそれによって新しいサービスが生まれ、表現は豊かになりました。しかし日本では、著作権を理由にして検索エンジンを禁止したため、検索サービスは全滅しました。
日本では既得権が非常に重視されるので、いまだにインターネットでテレビを自由に見ることができません。著作権法で禁止したからです。地デジだけは、テレビ局の許可をもらえば県域放送だけならできます。テレビ局は、国境のないインターネットにわざわざ県境をつくっているのです。スマートTVもテレビ局がいやがるので、電機メーカーはつくりません。
中国でスマートTVがはやっているのは、もともと財産権という考え方がないからです。これは共産党が国民の自由を侵害する原因にもなっていますが、中国から百度という世界第2位の検索エンジンが出てきたりしています。ここでは音楽や動画が自由にコピーできますが、お金を取るしくみもあります。コピーを禁止するより、自由にコピーさせてもうけたほうがいいのです。
もちろん著者の権利を守ることも大事ですが、それは新しい表現の自由とのバランスの問題です。今の日本にとって大事なのは、くだらないワイドショーやお笑いばかりやっている衰退産業のテレビ局を守ることでしょうか、それとも新しいメディアの試みを自由にすることでしょうか。答は、よい子のみなさんにはわかりますね。