テスラが時間外取引で大幅安、決算で上昇にブレーキ --- 安田 佐和子

アゴラ

テスラがいかに富裕層の間で人気か見ていただいた後は、決算を振り返ってみましょう。

取引終了後に発表されたテスラの7~9月(第3四半期)決算は、非GAAPベースの純利益が1590万ドルと前年同期の9710万ドルの赤字から黒字に転じた。1株当たり利益は12セントと、市場予想の11セントを上回っている。売上高は前年比で10倍超の6億300万ドルとなり、アナリスト予想の5億3500万ドルより強い。一方でGAAPベースでの損益は、3800万ドルの損失。1株当たり損失は38セントと、市場予想の25セントの損失より弱い結果だった。売上高は、9倍増の4億3130万ドルとなる。

充電すべきは、GAAPベースの業績か。

(写真:ブルームバーグ)

GAAPベースでの赤字幅が予想より大きかっただけでなく、販売台数でもツチがついた。「モデルS」の7~9月期販売台数は5500台と、一部のアナリスト予想5820台以下に終わっている。5500台のうち1000台が欧州向けといわれても、失望を禁じえない。10~12月期の「モデルS」の販売台数は、6000台を予想。こちらも、一部のアナリスト予想6600台に大きく及ばなかった。2013年通期の販売台数は予想に基づくと2万1500台で、従来の2万1000台を上回った。

10~12月期の非GAAPベースでの利益につき、テスラは「7~9月期並み」と予想。キャッシュフローも収支とんとんを予想しており、さらなる改善を見込んだマーケットの期待に反する結果となった。

カリフォルニア州で実施されているゼロ・エミッション車(ZEV)規制を通じた他自動車メーカーの支払いを除く粗利益率は21%。1~3月期17%、4~6月期の14.8%から大きく改善している。その上でテスラは、10~12月期の目標を25%で維持した。

以上の結果を受け、株価は一時12%も急落を演じました。アナリストの評価はといいますと。

バークレイズのアナリストであるブライアン・ジョンソン氏は、販売台数に焦点を当て「予想より鈍い伸びで、株価は足元数ヵ月間にオーバーシュートしていたと判断できる。株価は141ドルくらいが妥当ではないか」と指摘していました。時間外取引では引け値から22ドル安の154ドル程度まで下落していたことを踏まえると、さらなる下値を見込んでいます。反対にR.W.ベアードのアナリストであるベン・カロ氏は、株価急落に対し「粗利益率の改善が無視されている」と論じていました。時間外取引の急落が利益確定の売りという声も聞かれております。

いずれにしても正確にバリュエーションを測れるのは、この方の右に出る者はいないでしょう。8月13日付けのCNBCでこんな見方を明らかにしていたイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)、興味深いことに年初来から350%以上も急騰してきた株価に対し「実のところ、マーケットは寛大だと思う」と発言していたんです。

株価急落は、想定の範囲内?

(写真:Getty )

今後の注目点は2つ。

カリフォルニア州で実施されているZEW規制の恩恵から、テスラはZEVの販売台数目標に達しない自動車メーカーからクレジットを移転する代わりに支払いを受け取り、売上に役立てています。テスラは2012年10月1日から13年9月30日までに1311.52ものクレジットを移転したとされ、2位のスズキの32倍に及びました。しかし、カリフォルニア州は規制を改訂する見通し。2015年からは「モデルS」を通じたクレジットが40%削減するといいます。

そうなると、気になるのが新型モデルの投入。テスラは2014年にスポーツ多目的車「モデルX」を販売する見通しで、「モデルS」のハッチバッグの価格7万3000ドル(715万4000円)からの設定になるそうです。SUVより、俄然注目が集まるのが入門EVの販売。4万ドル(392万円)からスタートと観測されており、プリウスの5人乗りを超える設定ながらBMWの「i3」シリーズの4万5300ドル(441万円)以下とあって、販売テコ入れとなる期待が大きいんですよね。2014年の具体的戦略は10~12月期決算で発表といいますから、来年早々までお預けなのが難点ですけど・・。

長くなってしまいますが、高級車部門の決算はイマイチな内容が目立ちます。BMWが5日に発表した7~9月(第3四半期)決算では、売上高が0.4%減の188億ユーロ。中核にあたる自動車部門のEBITは6%減の15億5000万ユーロと、市場予想の15億9000万ユーロ以下にとどまりました。営業利益率は9%と、前年同期の9.6%から低下してます。

フォルクスワーゲン傘下アウディも、7~9月期の純利益は前年同期比18%減の9億5400万ユーロ。売上高も7.2%減の117億3000万ユーロだったんです。欧州の高級車部門は為替の影響と欧州部門の不振が足を引っ張ったとはいえ、減速感は否めません。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2013年11月6日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。