小泉元首相が各地で「脱原発で自然エネルギーに転換すべき」ということを説いて回ってることが話題になっています。ご子息の復興担当政務官ご就任と時を同じくしているので思わず「何か裏があるのでは」と勘ぐりたくなりますが、どうやら何の関係もなさそうなので、純粋にこの国の先を思ってのことなようです。
とはいえ、私は仕事で多少電力業界に携わる立場なのですが、少なくとも現状の自然エネルギーを利用した発電で原発を代替できる可能性はゼロと言わざるを得ません。(ご参考:http://usami-noriya.com/?cat=15)これは物理的な制約なので受け入れざるを得ないでしょう。ただ、再生可能エネルギーで唯一「脱原発」の実現を期待できる技術として「宇宙太陽光発電」構想があります。
宇宙太陽光発電の発想は極めてシンプルで、太陽光発電の普及の障害が低い稼働率と土地の不足であるならば、土地が無限大で光を遮る障害もない宇宙で大量に太陽光パネルを配備して、エネルギーをマイクロ波に変えて地球に送ってしまおう、というものです。初めて聞いたときは「何だその途方も無い妄想は!ガンダムか!」と思いましたが、考えれば考えれば合理的な発想です。しかも電力が宇宙からマイクロ波として送られてくるので、脱原発が可能となるだけではなく、受電施設があればどこでも電力が使えることになり、送配電網の負担が今よりも格段に減ることになり、現在では開発困難な地域の発展やインフラの維持が非効率な離島地域のコミュニティ維持にもつながります。
技術的にも必要な要素技術はそろいつつあり、2016年には宇宙からの送電実証実験が行われる予定です。太陽光パネルの宇宙での耐久性はデータが取れていますし、またロボットによる組み立て作業は日本に一日の長があります。宇宙への輸送に関してもH2Bを手にしました。もちろんコスト(現在は8.5億円/トン)という大いなる問題もありますが、軽い有期薄膜太陽電池の開発も進んでいます。
もちろんパイロットレベルの完成でも早くて20年程度の先と思われますし、本格的な建設のためには宇宙エレベータの建設が必要になると思われ、ますます妄想色が増してきますが、キュリー夫人がラジウムを発見してから原子核に中性子をぶつけて爆発させるという妄想のようなアイデアを核爆弾という形で具現化するまでの期間が47年間だったことを考えると、カーボンナノチューブの発見が1991年ですから、2040年頃には宇宙エレベーターが完成してもおかしくないわけです。
こんな途方も無い夢は一国ではとても実現できず、国際的・学際的な強力な推進体制が必要となります。誰よりも核の恐ろしさを知る我が国がその推進体制の真ん中に来ることは国際的にもおかしなことではないですし、小泉元首相ならば世界的なネットワークを用いてその枠組みを作ることが出来るような気がします。
せっかく脱原発を唱えたからには、謎の「巨大野党」と対決を宣言した「某野党」の元総理のように固定価格買取り制度のような小さな話に収まるのではなく、小泉元首相らしくスケールのでっかい人類の夢をかけたようなプロジェクトを推進していただければと、心の底から願います。私としてはやっぱりしばらくは原発は必要だと思いますが、現状の使用済み核燃料プールの容量が許す限りで打ち止めすべきだと何となく思っていて、自分の孫の世代(結婚すらしてませんがw)には原発は残したくないですからね。
今日は妄想だらけでしたが、小泉元首相にはガチで期待しています。
ではでは今回はこの辺で。
編集部より:このブログは「うさみのりやのブログ」2013年11月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はうさみのりやのブログをご覧ください。