米7~9月期国内総生産(GDP)速報値は、市場予想の2.0%増を大幅に上回る前期比年率2.8%増でした。4~6月期の2.5%増を上回り、1年ぶり高水準に並びます。
とはいえ内訳をみると、ヘッドラインの強さに反してGDPの7割を占める消費が市場予想の1.6%に届かず1.5%増だったんです。前期の1.8%増も下回り、2011年4~6月期以来の水準へ縮小しています。
民間投資も、全般的に鈍化が目立ちます。非住宅投資全体では1.6%増と、前期の4.7%増を下回りました。企業の設備投資を表す機器・ソフトウェア投資にいたっては3.7%減と、1年ぶりに減少しています。金利上昇、量的緩和(QE)縮小懸念から、企業は設備投資に及び腰になったんでしょうね。
GDPに寄与した項目はというと、在庫投資で860億ドル増と2012年1~3月期以来の高水準を遂げていたんですよ。政府支出も州・地方政府が支出を増加させ、0.2%増と1年ぶりにプラスに反転。貿易収支もポジティブで、輸出の寄与度も0.31%ポイントと3期ぶりにプラスを示しています。
結果を受けて、エコノミストの評価をはといいますと……。
JPモルガン・チェースのダニエル・シルバー米エコノミスト
「在庫投資が予想外に強含み寄与度は0.8%ポイントに及んでヘッドラインを支えたが、これは農業が押し上げている。非農業部門の在庫投資は590億ドルと当方の予想値に近かったが、前年に干ばつの影響で不作だったせいか農業が230億ドル増もの大幅な伸びを示していた。農業部門のサプライズがなければ7~9月期GDPはここまで上振れしなかっただろうし、農業在庫の伸び鈍化とともにGDPも緩んでくるだろう。」
2012年に中西部を襲った干ばつで、穀物価格が高騰したのは記憶に新しい。
今回のさえない結果を受け、CNBCの「カドロー・アンド・ザ・カンパニー」では保守派の論客で司会者であるラリー・カドロー氏が「アメリカは欧州化しつつあるでのは」と低成長時代の幕開けを不安視していました。本日のダウ平均は150ドル安で引けましたが、GDPの内容を受け量的緩和(QE)継続と受け取らず、成長鈍化・需要停滞を意識した余地を残します。年末・年明けに再び二極化する米議会が顔を突き合わせて予算協議に入るともなれば、なおさらです。
政府機関の影響が及ぶ米10月雇用統計も、気掛かりです。バークレイズのエコノミストは失業率につき9月の7.2%から7.5%へ上向くと予想しています。ブルームバーグ予想の7.3%より、悪い数字を見込んでいるんですね。
欧州中央銀行(ECB)の予想外の利下げに、米株は緩和万歳で買いで寄り付いたものの30分後に下落に転じた点は印象的でした。ドラギ総裁が追加利下げの可能性を排除しなかったことを踏まえると、なおさらです。
エマージング市場も目下、失速中。インド株式指数SENSEXとブラジル株式指数ボベスパはそれぞれ3日続落しており、インド・ルピーは足元の買い戻しを打ち消す動きに入っています。米10月雇用統計で弱含んでも、リスク・オンを迎えるかは非常に微妙な雲行きとなってきました。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2013年11月7日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。