再エネ業界は太陽光発電から洋上風力・小水力発電にシフトしていく感じ --- うさみ のりや

アゴラ

さていきなりですが、以下の3つのグラフを見てください。

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(引用:http://agora.ex.nii.ac.jp/earthquake/201103-eastjapan/energy/electrical-japan/stat/19/

資料は3つとも同じサイトから引用したものなのですが、一番上がメガソーラの発電所数、その次が月次ごとの運転開始発電所数、最後が各電源(火力、水力、原子力、太陽光、その他)ごとの発電実績です。

これを見ると固定価格買取り制度の導入は太陽光業界に凄まじいバブルを巻き起こしたものの、ややそのバブルが収束しつつあり、一方で再生可能エネルギーによる脱原発なるものは1ミリくらいしか達成されていないことが一目で分かると思います。その上、来年には太陽光発電の固定価格の買取制度32円/kwh程度(税抜き)になるのが見込まれること、円高が進んだ上業界最大手のサンテックが潰れて過剰供給構造がある程度緩和されてモジュール価格が下げ止まること、さらに太陽光発電は反社会組織の関わりが多いのでみずほ銀行の問題がとどめを刺す形で、来年には太陽光発電業界のバブルは崩壊して堅実に経営している施工メーカーのみ生き残ることになるでしょう。つい先日も太陽光発電のベンチャー「エステート24」の28歳の社長が詐欺でつかまりましたしね。(http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPTYE9A601Y20131107

こういった事態は菅直人という希代の迷総理が招いたことなのですが、 政府としても十分こうなることは予測済みで、次の手を打ち始めています。一つは「洋上風力発電の推進」、もう一つは「小水力発電推進の本格化」です前者に関しては風力発電の買い取り価格(22円/kwh)に対して、洋上風力発電を優遇し(30円/kwh)程度の買い取り設定をする見込みです。おそらくこちらも小規模なバブルを引き起こして1、2年で急増してその後打ちどまるのでしょう。

設備利用率

他方で注目されるのが「小水力発電」でして、小水力発電の特徴は太陽光発電、風力発電と比べて圧倒的に設備稼働率が高いことです。上の表では水力発電は45%となっていますが(暗黙にダム・河川が前提になっている)、1000kw以下の小水力に焦点を当てて仮に農業用水路を使った場合なら、水量が安定するので設備稼働率は80%近くまで行きます。

問題は用水路の権利を持つ土地改良区との権利調整が面倒なことだったのですが、農水省と経産省がこの一年間汗をかいて「全国農業用水小水力発電協議会」を結成し、山梨県など先進的な自治体などをフィーチャーし啓蒙した結果、30以上の都道府県で小水力の推進体制が組まれつつあります。特に岡山県などが息巻いている感じです。

ちなみに出力kwあたりの設置単価(土地代含まず)と稼働率を比べると、

○太陽光発電が25~35万で稼働率12%

(詳細はhttp://usami-noriya.com/?p=970)

○洋上風力発電が35~40万円程度で稼働率20%程度

(参考:http://jwpa.jp/news_pdf.php?i_news_content_id=158

○小水力発電が150万~300万で稼働率が80%程度(ヒアリング結果)

という感じです。小水力はまだ広まっていないので市場が十分形成されておらず、価格のバラツキが激しいのですが現状でも小水力に特化したモデルならば太陽光発電と十分今でも戦える感じです。さらに小水力の場合は太陽光に比べて土地がほとんど必要ないので、その点加味するとコスト競争力はかなりあります。

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さらには農業用水路など、民家が回りにある環境で電力を安定的に発電できるため、地産地消としてのエネルギー資源に向いています。この場合太陽光発電と違って系統網に負担をかけません。こんなこともありまして、現在政府関連で小水力の勢いを加速させようというプロジェクトがちらほら聞こえて参ります。ただ地元との調整や水路を考慮した設計などが必要で息が長く徐々に広まっていくような話なので、再エネ業界のつなぎの役割として一度来年・再来年あたりここで「洋上風力バブル」が発生することになるといったところでしょうか。それも太陽光で燃え上がったバブルの資金を誘導し、ソフトランディングさせるという意味では仕方ない気がします。

いずれにしろここに来て再エネ行政が正常化しつつあるのは、大変喜ばしいことではないかと。ではでは今回はこの辺で。


編集部より:このブログは「うさみのりやのブログ」2013年11月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はうさみのりやのブログをご覧ください。