FOMC議事録、雇用改善ペースに関わらずQE縮小に布石 --- 安田 佐和子

アゴラ

10月29~30日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録は、予想外な文言が入ってました。

JPモルガン・チェースのマイケル・フェローリ主席エコノミストをして「2014年1月のQE縮小発表の予想を維持するものの、今年12月の確率も以前より高まったと判断する」と言わしめています。

ポイントは、こちら

However, participants also considered scenarios under which it might, at some stage, be appropriate to begin to wind down the program before an unambiguous further improvement in the outlook was apparent.

そう、労働市場の改善が明確になる前に量的緩和(QE)の縮小に踏み切る見通しを打ち出したんです。また、「数回先の会合(Next A Few Meetings)」の可能性を点灯。イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)副議長による公聴会での証言がハト派色全開だったことを受けてQE継続に沸いた相場に、冷や水を浴びせました。ダウ平均は小幅高から、一時100ドル安をみせ15900ドルを割り込んだんです。

ダウ平均、FOMC議事録が公表された午後2時を境に見事に一段安。

dji

では、労働市場の改善ペースをよそにテーパリングに着手する状況はというと「QEのコストが利点を上回る」場合と説明しています。

10月FOMCではテーパリングの有無よりも、1)いかに引き締め策の憶測を与えず縮小させるか、2)フォワード・ガイダンスの強化策、透明性拡大策──に重点が置かれていたのも、見逃せません。

フォワード・ガイダンス強化策に関するポイントは4つ。→以下は、議論の内容を補足しております。

・失業率の数値目標6.5%からの引き下げ

→「2人の参加者」が失業率の数値目標を「6.5%以下」へ引き下げる案を支持した。半面「その他の参加者」は、引き下げに踏み切れば数値目標への耐性に懸念を招くとの見方を示す

・インフレの数値目標2.5%に対するレンジ下限を導入(1.5%か)

→失業率が6.5%を割り込んだ場合に備え、インフレ見通しのレンジ下限を設定し同水準では利上げしないという確約を盛り込む利点についても協議。全般的に、参加者は効果については不透明でごく限定的と判断しつつ「数人の参加者」は賛成に傾いていたという。

・引き締め過程が緩やかとなる可能性を表明

→経済改善を抑える「向かい風(headwind)」について議論も、結論にいたらず。

・超過準備預金の金利引き下げ

→「ほとんど参加者」が検討余地ありとの見解を表明。政策の方向性を示唆する手段となりうるも効果は限定的で、短期金利市場への影響に懸念を示す。

FOMC議事録を読み解くとテーパリングは決定事項で、フォワード・ガイダンスの議論を通じ正常化へ道筋を形成し始めたといえるでしょう。モルガン・スタンレーのエコノミスト・チームは「14年3月にQE縮小、テーパリングは100億ドルで米国債のみ、失業率の数値目標を引き下げ」を維持していましたが、他のエコノミストは予想を前倒ししてくる可能性を残します。同時に今回のOMC議事録は、足踏みムードが強まっていた相場に調整を促しそうです。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2013年11月21日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。