(1)はじめに
大学生と社会人が、働く目的を語り合う「ハタモク」という集まりに参加してきた。しっかり自分の意見を主張できる大学1、2年生が多く驚いた。就職活動を終えたばかりの学生もおり、大手企業に内定した人、ベンチャー企業に決まった人など色んな学生が参加していた。
私も同じ時期、こんなに初々しかったのかなと過去を思い出しつつ、改めて日本独特の新卒一括採用制度について考えてみたい。結論から言えば、新卒一括採用はまだまだイイネ!ということだ。
(2)新卒一括採用制度のメリット
新卒一括採用制度とは、企業がある期間中に卒業予定者を一括して在学中に内定を出して採用する制度のことのことである。
最近のアベノミクス効果もあり、来年の14年春に入社する主要企業の大卒採用内定者数も3年連続で増えたようだ。(日本経済新聞社が行った2014年度採用状況調査)
景気回復が続けば来年以降も大卒採用内定者数も増えていくだろう。
新卒一括採用制度のメリットは、企業側すれば一括で予定人数を採用できるので個々の時期に個々の採用をするよりもコストを抑えることができるという点だろう。また、学生側からすれば就業経験がなくても企業に就職できるという点、そして入社後もゼロから育ててもらえるので給料を貰いながら経験を積むことができる。米国などでは就業経験がないと就職が難しいと言われているだけにこのメリットは相当、学生には大きいだろう。
実際、OECDの発表している2012年の「若者(15~24歳)の失業率」は7.9%で、OECD34か国中最も失業率が低い。日本独自の新卒一括採用制度が果たしている役割も小さくはないだろう。
(3)デメリット
デメリットとしては、新卒者でないと内定を得るのが難しいということだ。大学を卒業してから既卒者で就職活動してもよほどのバックグラウンドがない限り新卒者と同等の大手企業に入ることは難しい。エントリーシートではねられるケースも多いようだ。大学によってはわざと留年させ、新卒者扱いで留まれるような体制を取っている。
この新卒を一括で採用し、入社後もずっと同じ会社で働くというこの文化は、労働市場の硬直化にもつながっている。中途採用の門戸が狭いのだ。
上述した「若者(15~24歳)の失業率」は日本はOECD諸国に比べ低いが、失業者の中で1年以上の失業者の割合は38.5%OECD諸国32か国中38.5%で14位と高い。
そして厚生労働省が発表したH24年度雇用動向調査によると、若者の離職率は20~24歳(男)で24.1%(女27.5%)、25~29歳(男)で14.7%(女21.1%)と他の年齢層に比べてこれらの年代は離職率が高い。
入社して1年ないし3年程度で離職してしまう割合が高くなってしまうと、現在の新卒一括採用制度と、入社後の長期的就業を前提としている日本企業文化では圧倒的な不利な立場に置かれる。新卒一括採用制度を取っている負の面とも言えるだろう。
(4)グローバル競争時代の採用制度
以上のように、若者の失業率が7.9%とOECD諸国で最も低いが一旦離職すると長期失業に陥ってしまう新卒一括採用制度のメリット、デメリットはある。
さらにデフレ下の長い景気停滞と、グローバル競争時代の突入により企業も社員を教育する体力が無くなり新卒一括採用制度も見直せという意見も多くある。
私自身もこのグローバル競争時代、優秀な人には飛び級や大学1年生からの内定は当然許される文化に変わっていかなければならないと思っている。
しかし、最近OECDが発表した国際成人力調査で日本が読解力と数的思考力でトップを取ったというニュースが流れた。日経新聞9日付けでもベネッセ教育総合研究所の新井健一理事長が、「終身雇用制度のもとで若手をゼロから育て上げる文化があり研修制度も充実している。学校を出た後も能力が上がるのは当然だ」と分析している。
まだまだ、この日本独自の新卒一括採用制度を廃止しようといった意見には同調するには早い気がする。フェイスブックに新卒一括採用制度ファンページができたら、私はイイネ!を押すだろう。
先日、内定を決めた大学生の笑顔を見てそう思った。
東猴 史紘
元国会議員秘書
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