「清須会議」観に行けば得する映画です

矢澤 豊

この忘年会シーズン、休肝日を利用して映画鑑賞としゃれこみ、三谷幸喜さんが脚本と監督を手がけた話題作、「清須会議」をみてきました。

とても楽しく観れたいい映画でした...が...あまり「評論家」したくはないのですが、テレビ局が一枚も二枚もかんでいる映画作品に対しては、反対意見がおさえこまれていると思うので、あえて注文をつけさせていただきます。


ひとことでいえば三谷さん一個人の限界がありありと浮き出ていて、いい脚本なんですが映画作品としてはあと少しのところが不完全燃焼というかんじが否めませんでした。

問題点その1:映像にヒネリが無さ過ぎ。カメラ・アングルが平坦。「お約束」のクローズ・アップと、「ごくありふれた」ロング・ショットのくり返し。舞台ではできないことをやってほしいと思うのは、彼の才能に対してこっちが欲ばり過ぎ?もっと対等な立場からアイディアを出し合える撮影監督を見つけてきたほうがいいのではないでしょうか。映像のみに限っていえば、いちばん印象に残ったのは、オープニング・タイトル前のまき絵のCGと、お城の櫓からの場面で背景に入ったCG風景でした。ようするに三谷氏が直接関わっていないであろう部分が優れている。これは技術・構想の問題以前に、人事の問題だとおもわれます。(「テレビ畑」と「映画人」がうまく融合してないのかな。)

問題点その2:ストーリーの最後、三谷さんの役者さんそれぞれ個人への思い入れからか、主要キャスト・メンバーの「最後のセリフ」シーンが延々と続くのでダレました。そしてこれが上記のクローズ・アップ映像のくり返しなので、ストーリーのフローがじゃまされるだけでなく、映像としても紋切調に。(役者さんたちそれぞれの演技はもちろん最高にみせるんですが。)三谷さんにタメ口きける編集者がいないんでしょう。

問題点その3:映画音楽。もっとちゃんとしたものを作ったほうがいいと思います。日本映画界の標準に比べれば、資金潤沢なんですから、だれかちゃんとタッグを組める人を早く見つけてきて欲しい。これも人事の問題でしょう。ジブリと久石さんみたいに、タッグというよりもカップルに近い人である必要はありませんが、世界の黒澤にケンカを売った武満徹さんぐらいのレベルで三谷さんとやり合える人はいないのでしょうか。

問題点だけでは片手落ちなので、以下にたくさんあった「いいところ」の中から主立ったものをリストします。

いいところ、その1:やっぱり三谷さんのネームバリューで集まる役者の質と彼らの「やる気」がすごい。そして、三谷さんが彼らのそれぞれに個人的思い入れをもって、それぞれの役を書き上げているので、やる気満々の役者陣との間にすばらしい相乗効果が生まれている。

いいところ、その2:歴史物に特に思い入れがある三谷さんなので、衣装・メークアップからこだわりをもって制作してあって、ビジュアル的にも、ストーリー的にも、細部に至るまで型にはまった時代劇に堕ちていない。プロダクション・ヴァリューが高い。

いいところ、その3:やっぱり脚本がいい。(上記したラストシーン・シリーズを除けば。)

いいところ、その4:剛力彩芽嬢。従来からの、みんなの「気づき」を裏切らなかった、ラストシーンでのオソロシイ表情。

いいところ、その5:鈴木京香さま。眉なしお歯黒の大年増の色気。「羅生門」の京マチ子さま、「乱」の原田美枝子さま以来の圧倒的存在感。ほとんどそこに座っているだけの演技なんですが。

いいところ、その6:舞台出身の三谷さん自家薬籠中ですが、清須城内という閉じた空間をうまく舞台化したようなセット。秀吉が黒田官兵衛とヒソヒソ話をしているのを、中庭をはさんだ向こうで勝家が眺めているようなスペース感。

いいところ、その7:個人的には、妻夫木くんのあっぱれなバカ殿ぶりに一票。

まだまだありますが、とりあえず以上です。

このエントリーが、ささやかながらも「評判の市」の一角となり、それはそれなりに皆さんをして映画館に足を向かわせる一助になってくれれば本望です。