少し、遅くなったが深刻なニュースなので読者に報告し、共に考えたい。ウルグアイ議会(上院)は12月10日、大麻(マリファナ)の栽培から消費まで合法とする法案を決定した。それに対し、ウィーンに事務局を置く国際麻薬統制委員会(INCB)のレイモンド・ヤンス(Raymond Yans)会長は「国際麻薬条約に違反する行為」と厳しく批判し、「青少年に間違ったシグナルを送る」と警告を発している。
ウルグアイ議会は医療目的以外の大麻の栽培、販売、そして消費を認める法案を採択した。大麻の完全な合法化を認める法案が採択されたのは世界で初めてだ、麻薬問題では欧州で最もリベラルなオランダでも大麻の消費だけを認めている。それだけに、ヤンス会長は「議会が国際麻薬条約を違反し、加盟国が義務の遵守を反故にした」と最高級の批判を表明し、法案の見直しを求めている。
国際麻薬条約とは、「麻薬一般に関する憲章」(1961年)、「同修正条約」(71年)、「麻薬および向精神薬の不正取引に関する国際条約」(88年)の3条約だ。ウルグアイを含む185か国が加盟している。ウルグアイ議会の大麻合法化法案は「医療と研究目的以外で大麻の使用は禁止」と明記された1961年憲章に反している。
ヤンス会長は「麻薬条約は人々の健康と福祉を守るために作成されたものだ。大麻の消費は1961年条約の中ではっきりと禁止されている。なぜならば、大麻は潜在的依存性のある危険な麻薬だからだ。大麻には人間の健康を害する物質が含まれている、特に、若者が消費すれがは成長を害する」と説明。
具体的には、大麻には非常に危険な化学成分(カンナビノイド)が含まれている。例えば、テトラビドロカンナビノール(THC)だ。麻薬をハードとソフトに分類し、ソフト麻薬は消費しても健康に影響がない、といった風潮がある。それに対し、INCBは「麻薬にはソフトもハードもない。両者とも心身に危険性がある」と指摘し、「大麻の乱用は認識困難や精神的錯乱という症状をきたす」という研究報告を紹介しているほどだ。
一方、ウルグアイ側は大麻の完全合法化について、「麻薬犯罪を沈静化し、犯罪を減少させる」とその理由を説明している。ウルグアイ議会で採択された法案は大統領の署名後、発効する。
昨年11月、米国西部のコロラド、ワシントン両州が住民投票の結果、嗜好用マリフアナ(乾燥大麻)の合法化案を過半数の賛成を得て採択した。世界各地で大麻合法化の動きが出ている。それだけに、ウルグアイ議会の大麻の合法化はメキシコやブラジルなどに波及することは必至だ。
編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2013年12月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。