2013年はワシントンを舞台に、数々のドラマが繰り広げられました。
1月
・「財政の崖」合意に伴い給与税減税の終了、富裕層向け所得税に始まりキャピタル・ゲイン税、配当税、遺産相続税を引き上げ
・米下院が連邦債務の上限を5月半ばまで引き上げ
3月
・強制歳出削減の始動
4月
・AP通信のツィートでホワ
5月
・債務上限到達も、レーバーデー明けまで財務省が特別措置を実施
6月
・エドワード・スノーデン元職員による告発で、NSAによる監視プログラムが発覚
・最高裁判所、男女間のみの婚姻関係しか承認しない結婚防衛法(DOMA)に違憲判決
8月
・シリアが化学兵器使用、米国による軍事介入への緊張高まった後で9月にかけ外交的に解決
9月
・暫定予算および債務上限協議こう着、共和党は医療保険改革施行の削除を狙う
10月
・1~16日まで政府機関の閉鎖
・26日の米上院補欠選挙にて、ニューアーク市長のコリー・ブッカー氏が当選
・医療保険改革向けサイトに障害相次ぐ
11月
・地方選、ニュージャージー州知事は共和党の現職が勝利、マサチューセッツ州は民主党の新人が勝利、NY市長も民主党の新人が勝利
12月
・超党派による2年間の予算案で合意、米上下院も可決
2013年をざっと振り返ったところで、全米発行部数1位に輝くUSAトゥデー紙が選ぶ政界の勝者・敗者をみてみましょう。
まずは勝者から。
▽ジャージー・ボーイズ
ハリケーン「サンディ」を乗り越え、ニュージャージー州の政治家お2人にとって13年は飛躍の年になりました。NJ州知事として再選を果たしたクリス・クリスティ知事は2016年の大統領選出馬の色気をちらつかせており、今後も目が離せません。もう1人はニューアーク前市長のコリー・ブッカー米上院議員。火事で炎に包まれる隣家に突入し女性を救出したヒーローでもある彼は、10月の補欠選挙で国政入りを果たしました。この方も2016年の大統領候補として早くも下馬評に上がりましたが、ご本人は否定しております。
党派は違っても、2人の目線は市民レベル。
(出所:USAToday)
▽女性の米上院議員
10月の予算協議でスーザン・コリンズ議員(メイン州、共和党)が妥結案を提示するなど事態打開に奔走したほか、年末の超党派・予算特別委員会ではパティ・マリー議員(ワシントン州、民主党)が共和党のポール・ライアン米下院予算委員長とともに2年間の予算をまとめ上げました。
他にクリステン・ギルブランド議員(NY州、民主党)とクレア・マッカスキル議員(ミズーリ州、共和党)、米軍内でのセクハラ問題と司法改正に互いの立場から尽力し、注目を集めたものです。
ワシントンD.C.、安倍首相が提唱するウーマノミクスを先取り?
(出所:USAToday)
個人的には、番外編としてテキサス州上院のウェンディ・デービス議員を挙げたい。フィリバスターで女性に不利な中絶禁止法の通過を阻止した勇気ある女性です。
▽ポール・ライアン米下院予算委員長(ウィスコンシン州、共和党)
2012年大統領選では副大統領候補として敗北したものの、10月の暫定予算と年末の予算案合意の立役者。
▽テッド・クルーズ米上院議員(テキサス州、共和党)
10月の政府機関の閉鎖前、医療保険改革を盛り込んだつなぎ予算の審議にフィリバスターを行使したことで全米にその名を轟かせました。21時間19分もの議事妨害は、歴史上4番目の記録です。当初は共和党内からも批判を浴びましたが、知名度急伸で結果オーライでしょう。
▽ブッシュ前大統領
大人気トークショーに司会者の似顔絵を持参して登場し、人間らしさをふんだんにアピールして表舞台への復活を遂げた前大統領。現職の大統領を批判しないスタンスに反ブッシュ寄りだった人の心も折れ、ギャラップで好き嫌いが逆転するなど好感度アップにつながりました。
以下は、USAトゥデー厳選、2013年の敗者を見て参りましょう。
▽オバマ米大統領
1年前の9月11日に発生した駐リビア米大使殺害事件を追求されるだけでなく、NSAの監視プログラムが発覚したオバマさん。肝煎りで送り出した医療保険改革にいたっては、施行を2014年に控え保険市場「エクスチェンジ」を抱えるhealthcare.govに障害が発生するわ、公約に反し改革を受け医療保険の解約に迫られる加入者が出てくるわ・・踏んだり蹴ったり、おかげで不支持率が過去最悪を記録しました。悪いことは続くもので、マンデラ前大統領の国葬で世間を呆れさせた自撮りの瞬間が世界中を駆け巡りましたねぇ。
▽NYのスキャンダラスな節操なき男達
アンソニー・ウィーナー元米下院議員(民主党)といえば2010年、同時多発テロ事件被害者向け医療負担補助案が米下院で否決された後、大声を張り上げ猛抗議したことで名を挙げました。しかし、何でも探し物見つけサイト「クレイグズ・リスト」で知り合った女性に裸の写真から卑猥なメッセージ(セクスティング)を送った問題で、2011年に辞職に追い込まれたのです。今年になって一念発起でNY市長選に出馬し政界への返り咲きを狙ったものの、あろうことか選挙戦中に新たなセクスティングが発覚するという間抜けな顛末に。クリントン前国務長官の側近だった妻は、2度の不貞行為を経ても夫を支え続けています。
もう1人は、スピッツァーNY州元知事(民主党)。AIGやらメリルリンチへの不正を追及した知事の座を勝ち取ったものの、娼婦との乱れた関係がスクープされ2008年に辞任を余儀なくされました。ウィーナー氏のNY市長選出馬にインスパイアされたのか、厚かましくも会計監査官に立候補したんですよね。あれから5年経過したとはいえ、高級娼婦専門クラブ「エンペラーズ・クラブ」で2年間に8万ドル(830万円)投じた事実は緋文字のごとく彼に焼き付いており、民主党の予備選で敗北を喫しました。
クリントン元大統領もしかり、英雄色を好むにも限度があります。
(出所 : USAtoday)
▽ティーパーティー
ボストン茶会事件に由来する名をもつ草の根保守運動と言われますが、平たくいうと「大きな政府」を忌み嫌う極右の皆さま方です。金融機関および自動車メーカーの救済などの政治介入をはじめ、医療保険制度改革に猛反対してきました。しかし、政府機関の閉鎖の引き金を引いたティーパーティー寄りの共和党議員の必死の抵抗は、悪あがきとして人々の脳裏に刻まれます。共和党の支持率が過去最低を更新した後、12月には超党派が2年間の予算であっさり合意しティーパーティーは形無しとなりました。
▽ヴァージニア州、ボブ・マクドネル知事
2012年の米副大統領候補として名が挙がり共和党知事協会の議長も歴任した期待の星だったものの、結婚する娘への法外なご祝儀、妻への高額な贈呈品を受け取ったなど収賄疑惑が浮上し、任期満了間近でツチをつけました。推定受取額12万ドル(1250万円)相当をローンで返済すると7月に謝罪とともに発表しましたが、後の祭りです。
▽ブルームバーグ市長
高架貨物線跡を空中散歩道として甦らせたハイラインをはじめ歩行者天国を数々送りだしたほか、健康問題に取り組みトランスファット使用禁止、カロリー表示義務付け、公共スペースでの禁煙を徹底してきました。半面、ビジネスを主軸とした都市開発やらソーダ水販売禁止条例の提出を嫌気しニューヨーカーは同市長を「独裁者」と呼ぶようになり、NY市長選挙では脱ブルームバーグを掲げるデブラシオ候補を勝利させたのです。
以上、いかがでしたでしょうか。今回勝者の座を射止めても、一寸先は闇というのが政治。同時に、いつ敗者が復活するか分からない世界でもあります。中間選挙を迎える2014年は、どんなドラマが待ち受けているのでしょうか。今から楽しみです。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2013年12月24日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。