クリスマスのフルコース --- 長谷川 良

アゴラ

今日はクリスマスだ。欧州のキリスト社会ではどこでもクリスマスを祝う。欧州に長く住むイスラム教徒の家庭でも子供にせがまれてゲストを招いたり、贈り物交換をするところがある。クリスマスの祝日だけは宗派間のハードルは案外、低い。

アルプスの小国オーストリアの日刊紙エストライヒ(24日付)は国民がクリスマスをどのように感じ、祝っているかを調査した結果を報じていたので、読者に紹介する。国民の84%は「クリスマス」を重要な伝統と感じ、普段は足が遠ざかっている教会にも10人に1人はクリスマス礼拝に参加するという。


興味深いのは「クリスマスは家で祝う」と答えたのは88%と圧倒的に多いことだ。18歳になると、家から独立する若者が少なくない欧州社会だが、クリスマスの日だけは家に戻り、家族と一緒に祝う。クリスマスが年1回、家族を呼び戻す祝日となっているわけだ。ただし、7%は独りで祝うと答えている。彼らにとって、クリスマス・シーズンは寂しさを一層感じる季節であり、「出来れば早くクリスマスが過ぎればいい」と感じているという。

オーストリアでは4件に3件(約74%)はクリスマス・ツリーを買って、家で飾る。クリスマス・ソングのベスト・スリーは、第1位Stille Nacht(きよしこの夜)で、第2位はLeise rieselt der Schnee、第3位はO Tannenebaum(もみの木)だ。
 
24日午後6時頃になると、いよいよプレゼント交換(Bescherung)の時だ。クリスマス・ショッピングで見つけたプレゼントを相手に贈る瞬間だ。多くは「相手がプレゼントをもらって喜ぶ姿を見るのがうれしい」という(クリスマス明けには、どの百貨店でも貰ったプレゼントの交換に来るお客で一杯となる。最近は、商品券をプレゼントする人もいる)。混乱する市内のショッピングを避け、オンラインでプレゼントを注文する人々が増えてきた。
 ちなみに、プレゼントは電気製品、化粧品、本、おもちゃ、お菓子、チョコレートからセーターやワイシャツなどが多い。毎年のことだから、プレゼント探しも容易ではない。クリスマス・シーズンには、プレゼント代など雑費が増えて、クリスマス明けになって、家計がパンクする家も少なくない。

午後7時過ぎると、家族とテーブルを囲んで夕食だ。クリスマスの夕食には魚料理(19%)が好まれる。魚としてはコイとサケだ。そして夕食を終えると、クリスマス礼拝(Christmette)に参加するために家族と共に教会に行く。以上がクリスマスのフルコースだ。

当方が欧州で初めてクリスマスを迎えた時、まだ独り者だったこともあって、友人が彼の実家に招いてくれた。クリスマス・ツリーの下には美しく包装された大小さまざまなプレゼントが置かれていた。当方にもワイシャツのプレゼントがあったことを覚えている。
 
なお、気象庁によると、24日、25日の両日、ウィーンでは気温が10度前後と暖かく、残念ながらホワイト・クリスマスとはならないようだ。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2013年12月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。