複数のルートから漏れ伝わる話によれば、安倍政権は2014年は、OECD及びIMF50周年を基軸に欧州外交を果敢に展開するつもりらしい。そして、その際に基軸となるのが、OECDとIMFの創設者であるケネディ大統領の娘である、キャロライン・ケネディ大使だという。
要するに、OECDを通じた援助外交、IMFを通じた金融外交をケネディ大使をマスコットに使い、欧州との連携を深め、中国牽制に役立てようということらしい。そして、2013年のアジア外交、2014年の欧州外交の成果をもって、2015年、すなわち戦後70周年に「安倍談話」を発表し、歴史問題の最終的な解決を図るという目論見のようだ。
なんとも客観性に乏しい、中国・韓国以下の戦略外交だが、実は靖国参拝とその影響により、これが潰れる可能性が出てきた。以下では、それについて論じたい。
上記で触れたように、安倍政権の2014年の外交政策は、ケネディ大使を活用したOECD及びIMF50周年の対欧州外交である。しかし、このキーパーソンである、ケネディ大使は安倍首相にかなり批判的とならざるを得ない可能性がある。それを証明する為に、まず彼女の非常に「薄い」人生を見てみよう。
1.ケネディ大使の略歴とそこから伺えるキャラクター
キャロラインは、ケネディ大統領の長女として、ニューヨークで生まれた。長じて、ラドクリフ大学に入学し、アートやジャーナリズムを学び、メトロポリタン美術館に勤務した。1986年に、同僚で12歳年長のユダヤ系のエドウィン・シュロスバーグと結婚し、三人の子供を産む。1988年には、コロンビア大学ロースクールを卒業して法務博士となり、弁護士資格をとった。しかし、どうも弁護士事務所で働くなり、開設するなりはしなかったようだ。
その後は、ケネディ記念図書館の館長やハーバード大学ケネディ・スクールの顧問を務めた。ぶっちゃけて言えば、父ちゃんの七光の名誉職的な仕事である。分かりやすく言えば、宮崎監督の息子がジブリ美術館館長を一時期やっていたのと同じである。
その後は突然、政治への野心をあらわにする。2008年に突如、オバマを支援し、ヒラリー・クリントンが上院議員を辞めて国務長官に就任することが明らかになると、その後継に意欲をみせた。しかし、世論調査の結果が、ケネディがヒラリーの後継となることに52%が肯定的、42%が否定的な反応を示すという微妙な結果が出た。その為、2009年1月に「一身上の都合」という言い訳で上院議員の補填指名を受けることを辞退した。
これはまったくの推測だが、どうもヒラリーとケネディ大使は、不仲だったのではないか。まず、2008年時には、市民活動家上がりのオバマというマイナーな政治家を大統領候補として早い時期からわざわざ支援した。クリントンには面白くない行為である。次には、ヒラリーの後継を目指そうとし、かなりのやる気を見せいたのに直前で辞退した。代わってヒラリーの地盤を継いだのは、クリントン政権にも関わりのあった女性下院議員である。ヒラリーに大統領選挙での報復として潰されたとみるべきだろう。
そして、その後、駐日大使となった。なお、日本との関わりでは、20歳の時に叔父のロバート・ケネディと「広島」を旅行し、新婚旅行は奈良・京都を訪れたことがある。
ここまで見てきて、第一に思うのは、ケネディ大使には申し訳ないのだが、はっきり言って何がしたいのかよくわからない人生である。デザイナーをやりたいのかと思ったら、その実務も余りない。美術館の職員というケネディの娘にしては地味な仕事につく。で、平凡な人生を送りたいのかと思えば、ロースクールに行く。しかし、弁護士にはならない。研究者や法曹の仕事をするわけでもない。父親の七光の名誉職をする。今度は政治家になろうとして失敗する。いくら大金持ちで生活に困らないとはいえ迷走しきりである。中身や具体性はないけど「意識だけは高い」人の典型的な人生である。
第二に思うのは、「薄い」のである。しばらく前から米国での記事を検索しているのだが、彼女については、特に成人以降は、この程度の経歴しか出てこないのである。しかも、仕事の具体的なイメージがわかない。美術館職員、七光の名誉職と中身が無い。
第三は、かなりリベラルだということだ。民主党内では、党内右派のクリントンではなく、かなり左派に位置するオバマを支援することや、よりにもよって「広島」を叔父と訪問していることだ。また、つい先日では長崎をわざわざ訪問し、被ばくしたマリア像を見てもいいのかと遠慮する風を見せた。要するに原爆についても一定の負い目を感じているのである。これは米国人にしては珍しいタイプであるし、まさか、彼女が「大東亜戦争は聖戦である」のような日本のネット右翼でもないだろうから、人道を重んじるリベラルなのだろう。
第四は、ナチュラルな親日ということだ。これは度々日本を訪問し、最近の態度でも明らかだろう。特に、最初は単身赴任するとされていたのに、家族全員で来たことはかなりの意気込みが感じられる。
以上を纏めると、ケネディ大使は、
・仕事は出来ないけど「意識だけは高い」人であり、仕事の中身より自分の名誉を重んずる。
・あんまり中身がなく、実務性からは遠く、理念的
・ナチュラルな親日
・かなりリベラル
だと言えよう。
実際、就任以来の発言をこうした特徴を前提にしてみると、かなり腑に落ちる。
では、わかりきってもいるが、このような人物が安倍首相の参拝をどのように見るのか考えてみよう。
2.ケネディ大使から見た安倍首相の靖国参拝
ナチュラルな親日で、人生一発逆転で、人生初のお飾りでない、まともな名誉職についた、キャロライン。各地で大歓迎を受け、あらゆる日本人が寵を得ようとすり寄ってくる。かなり現状、そして我が国に満足していたのではないか。
そこに、突然、リベラルな彼女には容認しがたい行動を安倍首相が取った。彼女の認識で言えば、唾棄すべきヒトラーと似たような東条英機等(注1)が眠っている神社にA級戦犯被疑者の孫が、大統領は間接的に、副大統領、国防長官、国務長官が一体となって直接的に警告したのに訪問した。それも、米政府が、日韓関係、日中関係、特に前者で韓国に対して並々ならぬ圧力をかけている時にである。
皆さんがケネディだったらどう思うだろうか。
「失望(disappoint)」である。
余談だが、一次政権で、安倍夫人の秘書官を務め、著書の帯に「信頼する分析官」と安倍総理が寄せた、安倍ブレーンの一人、宮家邦彦氏は日経ビジネスのインタビューで
「確かに、日本に対してはめったに使わない表現かもしれません。しかし、それを過大視する必要はないと思います。 「失望する」は「期待していることをしてくれなかったから、がっかりした」という程度の意味です。
それほど強い表現ではありません。外交用語には「抗議する」「非難する」など、「失望する」よりも強い表現がいくらも存在します。1980~90年代に貿易摩擦が生じていた時の方がはるかに険悪な雰囲気でした。」
等と言っている。だが、私は宮家氏に聞きたい。
貿易摩擦時に、「失望(disappoint)」が使われたんですか?
同盟国に使う言葉なんですか?
スノ―デン問題等で使われているのは無視ですか?
どう考えても宮家氏のは、安倍側近としてのポジショントークでしかない。
事実、宮家氏の見解を批判するかのように、一橋大学教授で、福島第一原発事故の民間事故調に日米関係担当として参画し、政府委員も数多く務めた、秋山信将氏は彼のtwitterで、
(承前)米政府がdisappointedを使ったのは、別に配慮してregretより弱い表現をするためじゃないと思うな。むしろ僕なんかは、「あれだけ言くなって示唆したのに結局行っちゃったんだ、がっかりだよ」っていう意味に捉えたけどな。パーソナルな感じが入ってる分、厳しくないですか?
— nobu akiyama (@nobu_akiyama) 2013, 12月 29
と指摘している。
このパーソナルな感じ、「あれだけ言くなって示唆したのに結局行っちゃったんだ、がっかりだよ」を米国大使館が出したところに、ケネディ大使の率直な感情が読み取れるのではないか。その意味で、やはりケネディ大使は、安倍首相とその取り巻きに強く「失望(disappoint)」したのである。
3.安倍信者達によるケネディ大使への攻撃
そして、このキャロラインの失望を超高速で加速させかねないのが、参詣新聞、ではなく産経新聞と安倍信者の一党なのである。
産経新聞は一昨日のコラムで「心ある日本人が「嫌米」にならぬようケネディ駐日大使はぜひ、靖国神社にお参りいただきたい。」等と愚かなことを書いた。産経新聞の諸君。上記に書いたようなキャラクターのケネディが参拝するわけがないだろう。だいたい、君たちは人民日報が、「心ある中国人が「反日」にならぬよう日本の駐中大使はぜひ、南京博物館にお参りいただきたい」等と書いたら激怒するだろう?私だって激怒する。駐日大使館は、日本のあらゆる新聞雑誌を収集し、本国に送付していると聞く。当然、こうした記事は、キャロラインの下に安倍と密接な新聞の意見として挙がっているのは間違いなく、より失望を加速させるだろう。
また、もっとひどいのが駐日米国大使館のFacebookページに対する、以下のような安倍信者の膨大な見るに堪えない書き込みである。
「私は「トモダチ作戦」と言うのは、トモダチではない者が日本とアメリカは友好国と見せかける為の作為的「作戦」」
「靖国神社には米兵も祭られているのを知らないんですか?」
「 内政干渉!!日本をバカにし、踏みにじるのはいい加減にして下さい! 」
「世界一の侵略国のアメリカ様が自らの外道な歴史を棚にあげてえらそうに日本批判ですか。」
「核の傘下にあるため、色んな無礼や横暴もある程度我慢してきましたが、disappointedってのは本当にイラッとしました。」
「ケネディ駐日大使、猛省して日本に詫びろ」
「米国・・おごれる者への天罰です!!次は槍が降ることを祈念いたします」
「帰れケネディ。お前はいらない。我慢の限界だ。」
恩知らずであり、事実誤認、ひどい独善、品性のない言葉、まさに彼らが非難する中国韓国の極端な人間と同類ではないか。(彼らが、中国共産党の大好きな内政干渉を使っているのは滑稽ですらある)この悲惨な状況のFBページをケネディ大使が見ている可能性は高い。ほとんどが日本語だが、スタッフに聞くなり、それこそ翻訳ソフトでもかければ見れるのだから理解していると見るべきだろう。そして、それはケネディ大使の「失望」をまさしく加速化させるであろう。
しかも、報道に出ているように、安倍の側近たちは、ケネディ大使の気持ちも入ったと思われる大使館声明を、「たかが大使館声明」と言っているのである(なお、その後、国務省も同様の発言、国防総省も抗議の会談ボイコットした)。これを見て、ケネディ大使がどう思うかは言うまでもない。
では、以上のケネディ大使への攻撃はどんな事態を引き起こすのか。
4.反日となったケネディ大使が安倍首相を潰す日
第一に、安倍政権の2014年度の外交方針の破壊である。既に述べたように、永田町でささやかれる、ただし複数の人間が話す噂によれば安倍政権は2014年は、創設者ケネディの娘であるキャロライン大使を使って、OECD及びIMF50周年を基軸に欧州外交を果敢に展開するつもりらしい。少なくとも、米国における「王族」ともいうべき、ケネディ大使を活用したいのは間違いない。
しかし、このままケネディ大使の失望があるラインを達すれば、彼女は安倍の誘いに乗らないだろう。もう乗らないかもしれないし、もしかすると反安倍、反日になるかもしれない。特に、リベラルでセレブな白人女性はめんどくさい。とにかく一回、怒らせるとめんどくさいことこの上ない。その場合、安倍政権の外交政策は著しいダメージを受ける。
第二は、米国内における日本のイメージのますますの低下である。ただでさえ、先日の米国内での世論調査にもあるように、米国にとっての重要な国としての位置が大幅に中国に追い抜かれてしまってるのである。ここに、米国内に多大な影響力を持つケネディ大使が苛められているというイメージが広がれば大変なことになる。日中での紛争時に、シリアと同様、オバマが議会に訪ねた場合、日本の自業自得として対日支援はされないだろう。そして、このような状況は、先日の論考の繰り返しとなるが、中国、韓国の思う壺である。
5.結論
まさに日本の安全保障の危機である。別に、ケネディ大使がどう思うが知ったことではない。問題は、現在の戦略環境において米国を引きずり込まなければならず、中国との緊張状態がある中で、米国内への大きな影響力をもった彼女が失望し、下手をすると反日になりかねないということなのだ。
蓋然性は低いが、将来、彼女なりその子供は大統領なり閣僚なりになる可能性だってある。少なくとも、上記に書いたように彼女はそういう野心が見える。そうなったらどうするのか。
私は、安倍信者の青年将校気取りの皆さんに以下の言葉を伝えたい。
「まさに皆さんの行動は、日本にとってだけなく、安倍総理の障害なのである。皆さんは、安倍総理を正しいものと信じて誠心誠意活動して来たのであろうが、既に、それは同盟を破壊し、中国韓国政府を喜ばせるだけなのである。
正しいことをしていると信じていたのに、それが間違って居たと知ったならば、いたずらに今までの行きがかりや義理上から、何時までも反抗的態度をとって、国益を阻害し、逆賊としても汚名を永久に受けるようなことがあってはならない。
共同通信の調査では、安倍首相による靖国神社参拝に関し、外交関係に「配慮する必要ある」が69.8%に達したように国民もそれを心から望んでいるのである(注2)。
今からでも決して遅くはないから、直ちにFBへの書き込みを削除するなり、本心でなくても米政府を批判する人間たちを批判するべきだ。そうしたら今までの罪も許されるのである。速かに米大使館へのつまらない書き込みをやめよ。」
そして、やはり強く思うのは、一刻も早く安倍総理は辞職し、麻生等ではない、リベラルと米国から思われている自民党議員に禅譲されるべきである。
むしろ、安倍総理におかれては議員辞職し、某市長や某元総理とハッシー、ルーピー、シンゾーの漫才トリオ「ルーピーズ」を結成するべきだ。勿論、ボケのルーピー、突っ込もうとしても更なるボケにしかならないシンゾー、本場関西の突っ込みと攻撃力は一流のハッシーという役割分担である。私は、この日本外交に壊滅的な影響を与えた、お三方の政界からの吉本新喜劇への速やかかつ華麗なる転職を願ってやまない。
注1:安倍信者の皆さんにご理解いただきたいのだが、情勢分析時には、一回自分の立場を離れるのが肝要なのだ。まかり間違っても私がそう考えている等とは努々、認識しないでいただきたい。ただし、我が国を焼け野原にし、女子供まで巻きこんだ戦争をやった連中のどこが肯定できるのかわからないが。東京裁判云々にしたって、マッカーサーですら天皇の戦争責任問題を回避したかったのに危うくしたのは、東条の発言である。だいたい、東京裁判で彼が活躍したと仮にしてもって、それはマイナス100点をマイナス70点にするようなもので、しごく当然であり、そんなものでは免罪されない行為だ。
注2:これに対し、ヤフーアンケートで8割が支持と寝ぼけたこと言っている人がいるが、その方はネットでの支持率云々と叫んでいた小沢一郎信者と同レベルであると客観視してほしい。不正選挙云々と言いだし、裁判を起こす前に。
付記:池田先生、松本先生、北村先生、皆様、先日の論考について直接のご紹介、もしくはRTによる掲示、本当に有難うございました。もし間違いや誤認があった際はご指導いただければ嬉しく思います。
站谷幸一(2013年12月30日)