日本の不動産と海外の不動産を比べた場合、大きな違いは2つあると思っています。
1つは金利環境です。海外で不動産購入に際しローンを借りようとすると、金利水準は概ね5%以上になります。賃貸の利回りがグロスで7%あったとしても金利差はわずかに2%に過ぎません。ところが、日本国内では未だに2%台、うまくすると1%台でもローンを借りることができます。
不動産の賃貸利回りと借入金利の差(イールドギャップ)は日本の方が圧倒的に高く、この点では日本の不動産投資の方が有利と言えます。
しかし、日本の不動産投資にはマクロ的に大きな問題があります。賃貸市場の需給の悪化です。日本国内の賃貸物件の空室率は全国で20%近く、東京だけでも12%程度と言われています。さらに今後人口が減少していけば、場所によってはさらに空室率が上がっていく可能性があるのです。空室になりにくいエリア、物件を見つけられる目利き力があれば良いですが、何となく物件を選んで何となく投資をしてもうまくいきにくいのが現状です。
2月に視察予定のテキサス州はこの空室率が年々低下しています。そもそもアメリカ全体が人口増加を続けているのに加え、シエールガスによる雇用の創出で、空室率は5%以下。実質的に街全体が、ほぼ満室というエリアも珍しくないのです。
ところが、日本国内でも、テキサス並みの空室率を実現している会社があると聞き、お話を聞かせていただきました。
お会いしたのは、日本財託の重吉勉社長です。
日本財託さんは、中古マンションの仲介を行い、購入してもらった物件の管理を請け負っている会社ですが、管理戸数は24年間の実績の積み重ねで12000戸あり、その平均空室率は何と、2%という信じられない結果を残しています。
海外の不動産並みの空室率の低さに驚くのですが、そこにはいくつかの理由があります。
1つは良質な物件を安定して供給できる体制です。不動産の仲介は、購入希望者の数が増えれば、物件が枯渇し、あまり良くない物件も販売せざるを得なくなります。そうならないためには需要に見合った良質な物件の確保が重要です。管理も請け負う会社ですから、入居者が確保できるような価値のある物件を紹介しなければ、後々のクレームにつながります。無理をしないで目利きにかなう物件だけを吟味して提供しているのです。
そしてもう1つは、入居者だけではなく、物件にテナント付けしてくれる不動産賃貸会社もお客様と考えてサービスを提供していることです。賃貸物件を紹介する営業マンにとって、サービスが良く、物件がすぐに決まりやすいような情報提供を心がければ、彼らは優先的に物件を紹介するようになります。日本財託さんの物件は、賃貸物件としてあっという間に決まるので、効率を考える営業マンにとっては、とてもありがたい物件になるのです。
入居者と不動産賃貸会社の担当者という2つの顧客に徹底的にサービスをする。これが、全国平均の10分の1という極めて低い空室率を実現している理由なのです。
マクロの人口動態を考えれば、日本の不動産全体にはネガティブな見方をしていますが、このようにきちんとしたビジネスを愚直に行い、差別化を実現している会社も存在するのです。
重吉社長は、苦労人でとても腰の低い、不動産業界のイメージとは180度異なる誠実な印象の方でした。近いうちにまたお会いして、具体的なお話をじっくり聞かせていただこうと思っています。
編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2014年1月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。