ビットコインはドルへの反発が生んだ代替通貨か --- 岡本 裕明

アゴラ

一部の世界で話題になっているビットコイン。仮想通貨の一つでありますが、その中で世界で最も知名度があり、「流通」しているものだろうと思います。ところがこのビットコインも昨年来、いろいろ噂され、「相場」が急騰したと思えば急落し、その安定性についてはほとんどない状況にあります。その上、最近では犯罪に使われたり、マネーロンダリングへの転用のリスクまで指摘されています。


もともとビットコインが便利だと思われた理由は異通貨間の取引において為替手数料や両替の手間がなくて良いこととされていますが、むしろ新興国に於けるインフレ対策という見方が強いかと思います。

我々が海外旅行する場合、主たる支払いはクレジットカードであとは現地通貨にて払うことが多いかと思いますが、新興国や途上国に行けばドルの方が喜ばれることも多く、国によっては両替しないで米ドルだけで通してしまうこともあります。また、カナダでは多くの店で米ドルを受け入れており、アメリカコインもそのまま使えます。更に公衆電話でもパーキングメーターでも使えてます(両替レートは1:1ですが)。また、多くのリテール、酒屋からスーパーまで(もちろん、私の店や経営する駐車場でも)米ドル紙幣は両替レートは悪いですが、使えるのです。

今時、多額の現金を持ち歩くのは日本人などアジア系の一部の人か、クレジットカードを作れない人ですから、大半の決済はクレジットカードになります。その場合、一番嫌なのがあとで見る請求書。そこにはなんでこんなに為替レートが悪いんだろう、あるいは手数料を取られるのだろうという疑問だろうと思います。

ビットコインが普及する素地はアメリカが世界の輪転機となったといった理由以外にもそんな現実的な問題が存在していたのだろうと思います。更に今後、5年以内にスマホ決済が確実に主流とになると見込まれる中で誰がディファクトスタンダードを作るのか、という乱世にも背景があるとも言えそうです。

では私なら何を考えるか、ですが、ズバリ金を担保にしたスマホ通貨を作ってみたらどうでしょうか? 金はまず、世界でその価値を認識しています。また、相場も立っており、歴史もあります。金を担保にしたネット上の仮想通貨を作り、所有者は当該為替レートでいつでも通貨や金に替えられるほか、スマホを通じた決済機能を通じて世界のどこでも使える、という発想です。ビットコインの場合、中央銀行がないという弱点がありますが、例えばこれを世銀あたりがコントロールするようなアイディアはおもしろいかと思います。

我々先進国に住む者にとってはそのありがたみは分からないと思いますが、新興国、インフレ国、政情不安定国などにおいてはドル以外の基準が欲しいのではないでしょうか? また、送金などもビットコインと同じような発想であればワークするのではないでしょうか? フィリピンやメキシコなどは先進国に出稼ぎに来て本国に送金するという流れは非常に大きく、それで国家が成り立っていると言っても過言ではないケースすらあります。

一方、ドルの一方的な基軸通貨への反発は常について回りますし、通貨供給量とはだれがれの為に行っているのかという疑問があります。つまり、一方が立てば一方が立たず、ということではないでしょうか?

金は昔から通貨になったり外されたり、という歴史を辿っています。それがまた、繰り返されないという保証はどこにもありません。決済方法がスマホという世界になることを前提に考えた時、ビットコインの弱点はその担保とコントロールということではないかと思っています。金は持ち運びに不便とされますが、金塊を家にため込む人は少なくなってきていると思います。つまり、実態に裏打ちされた仮想通貨という点ではもっともふさわしいもののように思えます。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年1月25日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。