オバマ米大統領は1月28日、就任以来6度目となる一般教書演説を行いました。
教育に尽力する教師に始まり、起業家、自動車工場で働く工員、農家、父と母の姿を通して「国を強くするのはあなた方だ」と語りかけたオバマ米大統領。
2013年10月に米連邦政府機関を閉鎖した反省から、今年は共和党との協調を色濃くしてました。演説のなかで、2013年に反対演説を担当し、2016年の大統領選候補とされるマルコ・ルビオ米上院議員(フロリダ州)を名指しする一場面も。給付付き勤労所得税額控除に代わり補助金支給システムを打ち出し、扶養者のいない低所得者層に配慮する同議員を称えていました。
雇用促進の一環として2013年夏頃から推進していた法人税の引き下げにも、あらためて言及。格差社会の解消に努めるスタンスを強調しながら、「我々は素晴らしい成功を達成した者に怒りなどしない」と述べるなど、緩急をつけております。
ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙が「28日発表された最新のWSJ/NBCニューズ共同世論調査結果では、大統領の仕事に対する支持率は43%で不支持率51%を下回った。不支持率が支持率を上回ったのは4月以降9回のWSJ/NBC調査で8度目だ」と報じていたように支持率が低下するなか、米中間選挙への配慮を忘れずバランスのとれた内容と言えます。
演説の柱は、やはり雇用。5年ぶりに失業率が低下し、住宅市場が回復し、製造業が1990年代以来の高水準を示しても、仕事=jobの登場回数は39回に及びいかに重視しているかを物語っていました。
ワードルでみても、jobが目立ちます。
(出所 : Politico)
海外で最初に名前が挙がったのは、中国。始まってまもなく、「中国はもはや投資に最適の国ではない、アメリカこそそうだ」と力強く発言しました。中国は2回登場しており、もう1つは雇用促進の重要性を説明する文脈で「超党派の枠組みで ”アメリカ製” のスタンプがついた製品を売り出すため市場開放を進めるべきだ。欧州と中国は様子見なんかしない、アメリカもしない」とコメント。中国の台頭を意識するアメリカを印象づけました。
海外との連携で「アジア太平洋諸国に注力していく」と発言していた点と併せて考えると、意義深い。2013年に巨大台風「ハイヤン」による大打撃を受けたフィリピンを例に挙げ、海兵隊をはじめとした米国の支援に「フィリピンは『アメリカの親切を忘れない、アメリカに神の加護あれ』との言葉をかけてくれた」と伝えたんです。フィリピンと言えば、ベトナムとともに中国の海上識別圏に強い不満を表明済み。オバマ米大統領がを口にした、たった2回に込められた「中国」の意味は予想以上に深いのかもしれません。旧正月を直前に控えることを踏まえると、余計です。
ちなみに一般教書演説の反対演説として、共和党は2012年に米下院の議員総会議長に選出したキャシー・マクモリス議員(ワシントン州)に白羽の矢を当てました。ルビオ議員のがっつり水飲みシーンのようなネタに乏しくソツなくこなしたのは、視聴者としてちょっと残念だった気がします。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年1月29日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。