新興国が通貨安を利上げで対応するところが目立ってきました。インドに次いでトルコは4.25%という大幅利上げを打ち出さざるを得ないのは1年で2割前後も下がる自国通貨の価値に対して防衛手段が限られるということでしょうか?
日本はかつて円高対策でドル買いという介入を通じた通貨防衛を行いました。これはその後、欧米から強い批判を浴び、実質的に介入はほとんどされることはなくなりました。一方、韓国は通貨防衛を介入という手段で比較的最近まで行っていたとされ、昨年あたりもそのニュースはちらほら見かけました。通貨防衛、つまり自国通貨安に対して防戦となればとなれば当然、国家が持つ大量のドルを売るという算段に出ねばならず、自国内のドル準備資金の流出につながります。
金本位制度があった時代、金の国外流出が各国の頭痛の種でした。日本でも井上準之助日銀総裁(当時)が欧米の流れに合わせ、浜口政権下のもと、金解禁を行ったところ、金が流出、日本経済が大混乱になり、高橋是清大蔵大臣(当時)がそれを中断し、止血したという戦前経済の著名なストーリーがあります。
また、中国においては清の時代、金ではなく、銀が地域間、および、貿易決済として主に使われていたのですが、この銀の流入、流出が清時代の経済を大きく左右したというのも当時の経済史からは見て取れます。
つまり、金にしろ、ドルにしろ、世界で交換可能な政府などにより裏付けされた貨幣ないし、それに代わる交換手段をもつ者よって世界経済は完全に牛耳られているいうことが改めて検証されたということでしょうか?
ドル流出を望まないのであれば自国の金利を引き上げることで「魅力的」にするしか方法はないのですが、新興国通貨はしょせん、流通量も使える範囲も限られ、あたかも金利という化粧で塗り固めるということ以外の何ものでもないのです。
確かに金利が上がることで自国通貨の一時的な下落防止措置になります。それは多くの新興国が頼る輸入製品の価格が安定することで国内経済の不安感を抑えるということであります。
一方でトルコは政策金利が12%となったわけで国内経済を考えればローンを組むという発想は難しくなるでしょう。インフレ率も8-10%ありますから実質金利は確かにそれほどでもないとも言えますが、経済の健全性からすれば疑問符が付きますし、内需の拡大には大きな逆風となります。同じことはインドといった大国でも見られるわけで新興国の行方に今後大きく注目せねばなりません。
折しもアメリカではFOMCが二日間の日程で始まっていますが、北米の銀行からのコメントは予定通り縮小を継続するのでは、ということでした。新興国が相次いで利上げに向かったのはその結果次第で再び大きな衝撃がやってくるかもしれないという事前防御策であったともいえます。
アメリカの量的緩和縮小はまだ始まったばかり。これから1年近くかけて行うであろうその縮小プランに新興国は戦々恐々とし続けなくてはならないかと思うと「たまらない」と叫ぶ声が聞こえてきそうです。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年1月29日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。