米1月雇用統計が7日、発表されました。ニューヨークではほぼ毎週にわたって積雪に見舞われたにも関わらず、今回は特に確認せず。「悪天候のため就労不能」が26.2 万人と2001 年以降の平均31.0 万人以下にとどまっただけでなく、「通常はフルタイムだが、悪天候のためパートタイム」も69.4 万人と2001 年以降の平均93.1 万人を下回ったんです。
そうはいっても、就業者数はやはりさえなかった。以下、米1月雇用統計の内容です。
米1月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比11.3万人増と、2011年1月以来の低水準を示した前月の7.5万人増(7.4万人増から上方修正)を上回った。ただし、市場予想の18.0万人増には程遠い結果となっている。
NFPの内訳をみると、民間サービス就労者数が14.2万人増となり市場予想の18.5万人増を下回った。サービスの伸び縮小が顕著で、ホリデー商戦終了による小売のほか、教育、金融は減少していた。政府も2.9万人減と前月の1.4万人減に続き弱含んだだけでなく、足元でもっとも落ち込みが激しい。一方で財生産業は7.6万人増と、寒波と積雪の影響で5ヵ月ぶりに減少した前月の1.3万人増からプラスに反転した。建設が4.8万人増と前月の2.2万人増から反発し、寄与。製造業も前月の0.8万人増を上回り2.1万人増と、6ヵ月連続で増加した。
NFPの伸びは、過去2ヵ月にわたり長期的レンジの下限に近い。
(出所 : WSJ)
時間当たり平均の労働賃金は、市場予想通り前月比0.2%上昇の24.21ドル(2470円)だった。前年比は12月と同じく1.9%の上昇を示し、2%割れを保つ。週当たりの平均労働時間は、市場予想および12月と同じく34.4時間。製造業は雇用が増加した半面、平均労働時間は前月の40.9時間から40.7時間へ短縮した。2007年以来で最高を記録した2013年11月から、伸びを縮めている。
失業率は、市場予想および前月の6.7%を下回り6.6%だった。2008年10月以来の水準であり、利上げ開始の数値目標「6.5%」に接近した。失業者数が前月比11.5万人減と、前月の49.0万人減を含め減少トレンドをたどり失業率の低下に寄与。就業者数も6.38万人増と、3ヵ月連続で増加した。雇用増加と失業者数の減少に加え、マーケットが注目する労働参加率が1978年以来の低水準に並んだ前月の62.8%から63.0%へ上昇。健全な失業率の低下を示し、政府機関の閉鎖以前の水準である2013年9月の63.2%へ近づいた。
JPモルガン・チェースのマイケル・フェローリ米主席エコノミストは、予想外に弱含んだNFPの結果に対し「過去2ヵ月間の就業者数が9.4万人増」だった点に注目。米連邦公開市場委員会(FOMC)の声明文では、資産買い入れの縮小に対し“最大限の雇用へ向けたこれまでの進展と労働市場の見通し改善に合わせ、委員会は追加的な資産買取のペースを緩やかな縮小を決定した”と説明していた。また資産買入の道筋は“規定路線にない”とも明記していたほか、債券買取枠の減額につき経済動向と労働市場の上方修正してきた経緯がある。その上で「テーパリングは、労働市場がトレンドを上回って改善する場合に実施したと判断できる」と説明。2月の結果が芳しくなければ、「減額を休止する可能性は否めない」とまとめた。
BNPパリバのジュリア・コロナド米国担当主席エコノミストは、失業率がさらなる改善を示した半面、就業者数と賃金の伸び悩みを確認した今回の雇用統計を踏まえ「強弱まちまちな内容」とコメント。3月18~19日のFOMC前に発表される米2月雇用統計が「弱い内容で株式市場のさらなる調整をあおり、経済見通しへの不安が高まれば減額をいったん中止させるのではないか」と指摘した。
以上、Fedの政策動向をうらな上で、エコノミストは失業率ではなくNFPをにらんでいることが分かります。米12月雇用統計から「テーパリング休止説」が浮上していましたが、今回でさらに思惑を深めた様子がうかがえますね。ダウ平均の大幅高も、緩和継続という下心が出てきたせいかもしれません。ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙の米雇用統計を受けた記事のタイトル、そういえば「就業者数11.3万人増、成長に新たなる懸念のサイン(U.S. Adds 113,000 Jobs, in Latest Worrying Sign on Growth)」でしたっけ。
米株は雇用統計後、直近の流れに沿って買い戻しを継続。本日ダウ平均は100日移動平均線がある15800ドル付近で取引をを終え、3日週の下落分を打ち消して引けました。S&P500は、約2週間ぶりに75日移動平均線が走る1800p近くでクローズ。ナスダックは25日移動平均線に近づき、4100p超えの水準を約1週間ぶりに確保して取引を終えています。来週11日に予定するイエレン新FRB議長の議会証言がハト派寄りと判断されれば、一段の戻りを試す余地が出て来ました。取引終了前に、米下院への書簡でルー米財務長官が2月27日に米債務上限が到達する見通しを指摘していましたが、ひとまずイエレン新議長に注目です。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年2月7日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。