ダイビングという「非日常」体験

アゴラ編集部

またバリ島でダイビング事故が起きました。2月15日から日本人女性7人がスクーバダイビング中に行方不明になり、18日になって5人の生存が奇跡的に確認されたものの、依然としてインストラクター1名、ダイバー1名が見つかっていません。バリ島では2012年8月にも女性ダイバーがダイビング中の事故で亡くなっています。

「非日常」体験は、我々ヒトにとって重要なもののようです。退屈な毎日が続くと、どこか精神も怠惰になり、その影響で体調も崩しがちになる。よく「ケとハレ」と言うように、慣れ親しんだ日常がなければ生きていけないし、また「ハレ」がなければ生きている甲斐もありません。「非日常」は周囲にないものだからこそ重要です。そのために我々には様々なレクレーションが用意されている。遊園地もそうだし旅行もそう。スポーツだって同じでしょう。また、ちょっとしたスリルを安全な場所で楽しむ、という行為も「非日常」体験です。


我々ヒトは水中では生きていけません。当方、無呼吸潜水の大家だったジャック・マイヨールと一緒に小笠原を旅したことがあるんだが、彼にしても水中で4分はいられない。しかし、海の中、というのは人間にとって究極の「非日常」です。アクアラングは読んで字の如く「水中の肺」なんだが、酸素を入れたボンベを背負って潜水します。これを使えば、水深約40メートルくらい、最大で3時間以上、潜ることができます。

今では一般的に「スクーバ(SCUBA、Self Contained Underwater Breathing Apparatus)ダイビング」と呼ばれ、日本では50万人ほどのレジャーダイバーが、海中水中という「非日常」体験を楽しんでいます。航空パイロットの場合、飛行時間で熟練度がわかるように、ダイバーも過去に潜った回数によって評価されるらしい。当方がかつてロケ取材でお世話になった「マウイの達人」ことサニーさんは、福岡市の消防レスキュー時代を含めて何千本も潜っている、と言っていました。そうした豊富な経験がないと、現地でダイビングコーディネーターのライセンスはもらえないそうです。

日本でレジャーダイビングをするには「Cカード(Certification Cards)」と呼ばれるライセンス取得が必要なんだが、業務以外のダイビングに法的な義務はありません。ただ、自分でボンベを所有し、自分で運んでメンテナンスもする、というのは難しいため、どうしてもダイビング店などに頼ることになる。その際、ライセンスの提示を求められ、Cカードがないと潜れない、というのが実情のようです。

また、こうしたことから、ライセンス取得やツアー企画なども含めた「ダイビング産業」というのがあり、約600億円と言われるレジャーダイバー市場を取り合っている構図も見えてきます。日本には「JRDA(レジャー・スポーツダイビング産業協会)」という経産省認可の社団法人があり、ダイビング店への指導や市場調査などを行っているんだが、JRDAによれば最近は70代以上のシニア世代のCカード取得が目立って増えてきているそうです。また、ほかのレジャースポーツと比べ、男女比がほぼ1対1というのも特徴。「気軽」に「非日常」体験のできるスクーバダイビングが老若男女に人気です。

しかし、水深40メートルの海中になれば、ボンベからの酸素がないと一瞬で命を失うことになります。海に潜った人にはわかると思うんだが、ほとんど音も聞こえないし、仲間との意思疎通もままならない。深く潜れば潜るほど恐怖心が増してきます。こうした「極限状況」でパニックに陥る人も少なくない。前出のサニーさんによれば、海中という「閉所恐怖」で強迫観念に抗しきれず、自ら水中マスクやマウスピースをはぎ取り、ボンベも脱ぎ捨てて水面へ急浮上しようとする未熟なダイバーもよくいるそうです。

バリ島の事故は、現地で人気のスポットで起きました。多種多様の魚が多く大型回遊魚も現れるそうです。しかし、そこは海流が速く水温も低いスポットで、場所によっては海底へ引き込む「ダウンカレント」と呼ばれる不規則な海流の変化もあるらしい。とても足ヒレだけでは泳ぎきれないでしょう。海流から抜け出すための水中スクーターの有無、待ち受け船とはぐれたときに見つけてもらうシグナルフロート、発煙筒などの装備がきちんとそろっていたのか、これから検証されると思います。

いずれにせよ「非日常」体験には常に危険がつきまとっている。だからこその「非日常」なんだが、けっして油断せず、五感を研ぎ澄ましながら楽しまないといけません。安全安心な「日常」があってこそです。安否のわからない残り2名が、一刻も早く無事に発見されることを祈っています。

Passion Fruit ─情熱の果実─
バリ島で行方不明の女性を発見


糖質制限ダイエットはなぜ危険なのか?
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なんでも「過ぎたるは及ばざるがごとし」です。炭水化物の摂り過ぎが良くないことはわかっているんだが、かといって極端に炭水化物の摂取を制限することが健康に悪い影響を与えるのは当たり前でしょう。いわゆる「糖質制限」でのダイエットを提唱している医師らも同じ意見だと思います。しかし、我々を含めたメディアは、極端な話題に流れがち。これは、糖質制限ダイエットの危険性を指摘している関西電力病院の医師の意見を紹介しているブログです。

近畿大学入学式をつんくさんがプロデュース
フィールドプロモーションニュース
私立の総合大学で医学部のある学校は多くありません。関東だと慶応大と日大あたりか。関西ではやはり近畿大学でしょう。早稲田大は医学部がないのがよほど悔しいらしい。一時期は東京女子医大に接近していたんだが、今では疎遠になってるとか。STAP細胞を発見した女性研究者も早稲田大から一時期、東京女子医大へ進んだようです。関西の私学といえば「関関同立」。しかし、この記事で紹介されている近畿大学も侮れません。水産研究所の「近大マグロ」はあまりにも有名になりました。大阪の大学らしく商魂たくましい。東京の有楽町のコリドー街にも出店しています。

たった1枚のファーストクラス航空券で1年間タダ飯を食べ続けた男
GIZMODO 日本版
これは優れもののアイディアです。空港のラウンジは航空会社ごとやクレジットカード専用のものがあったりして充実しています。飲み物はもちろん食事も無料だし、無線LANなどのネットも使い放題。パソコンが設置されているラウンジもあります。リラックスできるソファや簡易シャワーまである。トム・ハンクス主演の映画『ターミナル』では、空港内で暮らす男を描いていたんだが、この記事ではファーストクラスのチケットを利用した中国人を紹介しています。空港の近所に住んでたら、一度やってみたくなりそうです。

Asteroid to hurtle past the Earth at 27,000 mph
The Telegraph
サッカー場三つほどの大きさの小惑星が、2月17日に地球から257万5000Kmほど離れた場所を通過した、という記事です。ちょうど去年の今頃、ロシアに隕石が落下して大きな話題になりました。また、同じ頃、小惑星が接近したんだが、2万8000Kmくらい離れてたので、今回のものはずっと遠いです。「Slooh」と呼ばれる宇宙望遠カメラがあって、自動的に小惑星をスキャンするらしい。常に地球の脅威を与える可能性のある小惑星を見張っている、というわけです。


アゴラ編集部:石田 雅彦