日本は大丈夫か?(その1)悪化する経常収支 --- 岡本 裕明

アゴラ

日本の経常黒字が2013年はわずか3兆3000億円となり、比較可能なデータとしては過去最低となったのですが、これをしっかり受け止めた人はどれぐらいいたでしょうか? 経常収支とは貿易収支、サービス収支、所得収支、経常移転収支の合計であり、かつて日本は貿易収支が大幅に黒字で海外から儲け過ぎという批判が出るほどでありました。


ところがその貿易収支は2011年から赤字となり、年を追うごとにその赤字幅は広がっています。一般的な理由は震災により原発が止まりLNGなど発電燃料の輸入が増え、さらにアベノミクスで円安になったことが拍車をかけた、ということになっています。ですが、貿易収支は徐々にその黒字幅を下げてきていたわけで、原発事故は確かにトリガーになったもののそれだけが原因ではありません。

最大の根本理由は国内の産業空洞化、これが日本の産業構造に大きく負担になっていることではないでしょうか? 但し、メディア的にはこれを第一義にすると産業界から批判が出ます。一方、発電燃料の輸入や為替の理由にすれば誰も文句は言いません。つまり、私はメディアの捉え方にやや、歪みがあると思っています。

日本の輸出産業の空洞化は昨日、今日に始まったわけではありません。グローバリゼーションは中国が世界の工場と言われるようになった時から本格化し、尖閣問題に端を発する日本企業の「プラスワン」思考、さらには現地で作り現地で費消する国際版の「地産地消」化はマーケティングの上で大きな意味がありました。つまり、人件費や不動産コストが高く余計な付加価値がついている日本から輸出するよりも現地の人を雇い、現地の事情を察したうえでの仕様とする製品がモノを売る主戦略になったことで時代の変化を生み出したともいえるのです。

ある意味、1992年から経常赤字となっているアメリカ化しているといってもよいでしょう。

なぜ、アメリカの貿易赤字が赤字になったか、いうまでもありません。高い人件費や社会保障費負担もありましたが、故障の多いアメ車はなかなか世界市場を制覇するまでに至りませんでした。工作機械や精密機器に至ってはほぼ完敗だっだといってもよいでしょう。それは相手市場との競合に負け続けた結果であり、そのために海外の会社を買収するという力づくの勝負に出たのがM&Aだったともいえるのです。

今、日本の企業が海外の有力企業を次々買収しています。サントリーしかり、ソフトバンクしかりです。こういった努力により所得収支を通じて日本の経常赤字を埋める形が当面続くのでしょうけれど為替水準次第ではいつでも経常赤字になる可能性は大いにある、と言えましょう。

ところで経常黒字国の顔ぶれは様々ですが、比較的資源国家が安定しているように思えます。カナダは赤字ですが、来年にはプライマリーバランスは黒字が復活するはずで、当面、黒字が続く見込みです。実は資源国では産業の空洞化のようなものは起きません。農業も同じです。つまり、その国家の土地から黒字を生み出しているのです。わかりやすく言えば資源持ちの国は不動産の大家業で安定した収入があるのに対して日本は今や、国内市場が縮小している中、企業が生産拠点を海外に移すため貿易収支は恒常的に赤字化することになるのです。

もちろん、経常収支の赤字が直ちに悪いと断言はできません。ただし、日本の「貯金」がだんだん流出していくことは事実ですのでどこかで歯止めをかけなくてはいけません。

私はその歯止めの可能性となるのが日本の海や地下に眠る潜在資源と輸出できる農業ではないかと思います。ところで実は世界では水不足が深刻になってきています。日本では水道をひねればうまい水が何ら抵抗なく飲めるのですが、世界を見渡せば水はボトルを買って飲むものという常識の国々が増えてきています。この日本の水は将来的に間違いなく輸出できる付加価値ができるはずです。あたかも原油のように、です。つまり、われわれが持っている潜在資源はとてつもなく大きいものがある、ということを認識すべきだと思います。

これらをビジネスとして「発掘」できれば極端な話、貿易収支が再び黒字化する可能性すらあるのです。

日本にはまだまだ大きな潜在的チャンスを持っているという一例ではないでしょうか?

明日、「日本は大丈夫か その2」としてGDPが1%にとどまったことを考えてみたいと思います。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年2月18日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。