50代から上の日本の人にとっていわゆる「元祖買いだめ」とは1973年の石油ショックの際、トイレットペーパーが街から消えたあの事件ではないでしょうか? 歴史を紐解けばいわゆる買いだめはコメを舞台にした事件が多い気がします。しかし今やコメがなくても小麦があればよい時代となったもののトイレットペーパーはさすが戦後直後のように新聞紙で代替というわけにはいかないでしょう。
消費税が導入された時、3%から5%に上がった時、そして今回と日本人は大体駆け込み消費をすることがパタン化しています。消費税だけではなく、たばこが値上がりするとき、政府の補助金政策があったテレビや自動車の時もそうでした。つまり、駆け込みとは日本人の典型的な行動であり、消費税が上がることへのささやかな抵抗というより、半ば本能としてそういう動きに出るのでしょう。
カナダで一般消費者の行動パタンを見るといわゆる所得の少ない人ほど小口買いをし、ゆとりがある人はまとめ買いをする傾向にあります。例えば、あまり裕福ではないエリアのスーパーに行けば売れる商品はパッケージが一番小さく価格の安いものでありますが理由は手元にお金がないからであります。買い物をしてレジに並んでいると時として支払いでトラぶっているケースを見かけます。レジの合計が100ドルで支払いをデビットカードでしようと何度トライしてもデクライン(支払い不可)になる人です。その場合、いくらならOKなのか分からないので客は適当に「これとこれを除外して」とレジの人にお願いし、再度精算するという長いプロセスを後ろに並んでいる人たちの苛立ちも気にせず平気でやるのです。
そういう海外の世界を見ながら日本の様子を見ていると買いだめするほど金がある、という見方もできなくはありません。
ではトイレットペーパー。カナダでは30ロールぐらい入って1300円ぐらいですから消費税が上がろうがどうしようがこれ以上買いだめしたら置くところがないという問題に直面します。つまり、消費税増税に対抗して買いだめする方が面倒なことなのです。大体トイレットペーパーは家庭内の消費量が決まっていますから買いだめするより、必要な時に必要な分だけ購入する方が消費税を節約するより良いこともあるはずです。つまり、日本人は目先の価格で踊らされやすいともいえるのです。
最近ではあまり聞かなくなりましたが新聞のチラシをみて奥様方はあっちのスーパー、こっちのスーパーとママチャリを飛ばして目玉商品を買いあさり、10円得した、20円得した、という自慢をしていたものです。最近その会話をあまり聞かなくなったのは新聞を取らなくなった家庭が増え、チラシを見るチャンスがないこととネットスーパーの宅配を含めたネットショッピングが増えたことが原因でしょう。自転車を飛ばしてあちらこちら買いに行くメリットは奥様が自転車を通じて健康になることぐらいで10円節約するために30分時間を使うその理不尽さはあまり考えなかったのだろうと思います。
日本ではあまり論理的になってはいけない国であります。ロジックではそうだけど、実態は違う、ということは耳にタコができるほど聞かされてきました。特に私のように外国に長くいると明らかに判断基準が変わってきます。浪花節などはあり得ないのであります。(笑)ですが、賢い消費者とは何か、というのは考えるべきでしょう。狭い日本の住宅に買いだめした商品が鎮座するよりももっと大事なことがある気がします。
一方、売る側も売れるのだから値引きはそれほど強く打ち出さなくてもよいことになります。ならば、消費税増税後に需要が落ちたところで安く買うという可能性も残っています。
3%の節約は多くの家庭にとって非常に重要な意味合いがあるでしょう。が、それに乗じた売り手側の心理に踊らされないよう気を付けることも重要かと思います。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年3月28日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。