人が感動し、涙を流す時 --- 長谷川 良

アゴラ

韓国「中央日報」日本語電子版は3月29日、朴槿恵大統領が28日、訪問先の独ドレスデン工科大で演説を終えた後、弦楽四重奏で演奏された「懐かしい金剛山」を聴きながら涙を流したと報じ、その写真を掲載した。

中央日報によると、朴大統領は演説で、「Wir sind ein Volk(私たちは同じ民族)。統一直後に東西ドイツの国民が一つになって叫んだ熱い声が韓半島でも必ず響くと信じている」と述べたという。南北に分断された民族の深い決意が伝わってきた。


当方は韓国人歌手キム・ヨンジャさんの「イムジン河」を聴くたびに目頭が熱くなる。韓民族の切ないまでの民族心が異邦人の当方にも伝わってくるからだ。

ソチ冬季五輪大会のフィギュアスケート浅田真央選手が自由演技を終えた時、彼女は思わず泣きだしたが、TVで観戦していた当方もつい涙してしまった。SPでは満足できる演技ができなかったが、自由演技では何かが吹っ切れたように自由に舞っていた。彼女自身、解放感に浸り、涙が出てきたのではないか。

BBC放送が28日、報じた話をご存知だろうか。39歳の英国人女性(Joanne Milne)の話だ。彼女は生まれつき聴力がなかったが、人工内耳の手術を受け、人生で初めて音を聴くことができた。「これまでの人生でも最大の経験だ。今もショック状況だ」という。「電気のスイッチを入れる音、水の流れる音が聞こえた時、自分は叫びを止めることができなかった」と証言していた。

生まれて初めて音を聴き、その感動に体を震えさせている彼女の姿を見たとき、当方も激しい感動を覚えた。 

次はオーストリアでの話だ。21年間、病気の子供や病に苦しむ老人たちに仕えてきた犬ロニー(Ronny)の話だ。癒しの犬として特別な訓練を受けてきたロ二ーが今年2月、亡くなった。ロ二ーの持ち主によると、「ロ二ーは全ての子供たちや大人たちから愛された犬だった」という。

犬を含む全ての動物は本来、それ自体で完全な存在だ。その無垢で完全な姿に私たちは感動し、疲れた魂は癒される。「完全な姿」「無垢な世界」について、わたしたちは久しく説明できなくなったが、ロニーはそれを教えてくれていた。 

ロッテルダム動物園の飼育係として25年間働いてきた男性は脳腫瘍で死期が迫っていると告げられた。彼は世話してきた動物たちに別れを告げるため動物園まで連れて行ってもらった。一頭のキリンが飼育係に近づき、キスをした。キリンは飼育係がもはや長く生きられないことを知っているように、飼育係の頭を長い舌で撫でた。その動画を観た時、当方は涙を抑えることができなかった。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2014年4月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。