日経電子版の記事のタイトルの「忍び寄る『倹約の時代』」を見て私の懸念が現実化するかもしれないという気がしてきました。
日銀はデフレからの脱却、そして2%のインフレに向けて「順調な」推移を見せていると考えています。事実、デフレからの脱却はある程度達成しつつありますが、ディスインフレから2%の「健全なるインフレ」が達成できるかはこれからが正念場となります。その中で4月1日から消費税が8%になったことに伴う売り手側の対応は見事にばらつきが出ています。
牛丼三社が横並びの280円から三社三様の展開になったことが好例だと思います。ただ、日本のテレビニュースを見ている限り、輸入価格などのコストが上がったことも踏まえ、この際に便乗的な値上げとなっているケースもあるように見受けられます。
あるワンコイン弁当屋では価格据え置きですが、味噌汁が無料でつかなくなったという例を報道していました。500円に対する消費税増税分は15円。それに対して弁当屋の味噌汁単品価格は50円から80円程度とすれば実質値上げになります。多分、この弁当屋は価格据え置きに大きな意味があると感じたのでしょうが、消費者からすれば味噌汁を別に買わなくてはならない分、余計な出費をせざるを得ないのです。
また、デパートではサイズを抑えた弁当などを売り出しているようですが、これも計算しなくてはいけませんが、往々にして値上げしているケースが多いものです(通常はサイズが小さいと単価は上がります)。つまり、売り手側は消費者の懐を考えた上で消費税増税に伴う余計な出費を押さえる価格戦略に出ているところが多いのですが、消費税増税前と増税後では同じ価値を買うという比較では価値の下落(=価格の上昇)が起きているはずでです。
ある意味、円安、輸入コスト高で値上げしたかった売り手側としてはちょうどよいタイミングだったということになります。これはコストプッシュ型のインフレ要因となり、ディマンドブル型で政府や日銀が望んでいる消費拡大とは異なってしまいます。
では、消費税狂奏曲の買いだめが一巡した後、人々の消費行動はどうなるのでしょうか?
それが私の気にしている倹約ではないかと思います。
家飲みが流行り出したのは昨日、今日ではないのですが、最近、やけに売れているのがアルコール度が高い缶チューハイ。8%、9%といった高いアルコール度の商品が売れているその理由とは早く酔えると聞いた時、思わず笑ってしまいましたが、実際9%のロング缶を2本も飲めばかなり効き目があることは自分で実証済みであります。
東京に行って何か食べる際に家で食べるか、外で食べるかという選択肢があった時、明らかに家の選択をすることが増えたその理由はレストランのメニューが中途半端でわざわざそこで食べなくてもよいだろうということであります。家やスーパーの惣菜ではなかなか食べられないものならば喜んで食べに行きますが、居酒屋の刺身やレストランの鳥のから揚げが特別うまいわけでもないのに惣菜屋の3倍の価格を払う理由が見つからない気がします。もっとも友人や会社の同僚とは外飲みでしょうからこのストーリーが一概に当てはまるとは言いませんが、売り手側が価格コンシャスになりすぎて商品の魅力をそぎ落としているかもしれない点は留意すべきではないでしょうか?
トイレットペーパーを1万数千円分も買いだめした主婦が後悔している記事もありました。まさに消費税増税をめぐる様々なドラマが繰り広げられているわけですが、便利で豊かな時代を迎えたからこそ、倹約というチョイスも出てくるのでしょう。それはこの先、物価は上がれどモノが売れないというストーリーが待っているということでしょうか? 企業にとっても日銀にとっても政府にとっても消費低迷は最悪のシナリオ。ならば企業は小細工などせずに消費税分を価格に普通に転化した方がわかりやすいということなのかもしれません。消費者は猜疑心旺盛という前提を忘れてはいけません。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年4月7日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。