4月8日のアゴラ「言論アリーナ」に出演し、社会保障亡国論:動かない政治を変えるには?」「というタイトルで、議論を行いました。Youtubeで無料で見れるようなので、ご参考までにお知らせします。
津波に例えるのは不謹慎かもしれませんが、この少子高齢化による社会保障財政の破たん(あるいは、膨大な世代間不公平の発生)という「大津波」は、被害額でいえばどんな震災をも上回る恐るべき破壊力です。
社会保障の分だけ考えても、何と1500兆円という恐るべき純債務額を、今の若者世代、これから生まれてくる子供たちに背負わせることになりますので、まさに未曾有の大災害といってもよいでしょう。しかも、震災とは違って、確実にやってきますので、「想定外」という言い訳はできません。また、この災害は100%「人災」であるという特徴があります(自然災害とは違って、被害にあうのは自業自得のなせるワザです)。
しかし、津波と異なる点は、すぐにやってくるものではなく、10年、20年単位の時間をかけてやってくる災害であるということです。今日、明日にやってくる危機ではなく、10年後、20年後にジワジワやってくる話では、なかなか国民の間に危機感が生まれず、したがって政治的な優先順位が上がらないということに、この問題の難しさがあります。出演者の石川和男さんの言葉を借りれば、「ゆでガエル」ということです。しかし、財政危機が訪れてから対策を始めても、もはや手遅れで、座して死を待つより仕方がなくなります。
本当は、今からすぐに対策を始めるべきですし、景気回復で余裕が生まれた今こそ、社会保障財政の抜本改革に手をつける絶好のタイミングなのですが……。また、日銀が現在、事実上の「日銀引き受け」という財政ファイナンスをしている状況では、中長期的な社会保障の抜本改革を今決めないと、近いうちに国債の信任が崩れるリスクが大変高いと思うのですが……、現実の政治は全く動きません。
先日も、6月に行われる年金財政検証に使われる将来の経済前提値が決まりましたが、まったくありえない数字が選ばれています。たとえば、これから100年近い長期間にわたる積立金運用利回りの想定値(基本シナリオ)は「4.2%」と、前回あれほど批判された4.1%を上回る値に、ほぼ決定されてしまいました。どう考えても今の安倍政権の社会保障に対する認識は、おかしいと言わざるをえません。金融政策とは異なり、社会保障問題に対するまともなブレーンが政権内にいないのでしょうか。
編集部より:この記事は「学習院大学教授・鈴木亘のブログ(社会保障改革の経済学)」2014年04月10日のブログより転載させていただきました。快く転載を許可してくださった鈴木氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は学習院大学教授・鈴木亘のブログ(社会保障改革の経済学)をご覧ください。