中国がロシア製の強力な地対空ミサイルを持つ意味

アゴラ編集部

ロシアがウクライナとクリミア、そしてウクライナの東部に執着するのは、単に歴史的な帰属問題や資源、米国とEUとの鍔迫り合い、というだけではありません。クリミアにあるセヴァストポリ軍港は、ロシアにとって重要な軍事拠点でもある。ロシアが黒海から地中海へ出て行くためには、古くからの仇敵であるトルコのかんぬき、ボスポラス海峡を通過せざるを得ません。現在では1936年に締結された「モントルー条約」によって同海峡の通航が保障されています。


ただ、この条約では、商用船舶の航行の自由が定められている代わり、航空母艦や8インチ以上の火砲を搭載した軍用艦船は通過できないことになっているようです。旧ソ連時代に建造された実質的には航空母艦のアドミラル・グズネツォフも、黒海艦隊に所属する際に同海峡を通過するため、名目としては重航空巡洋艦、と公称し、ごまかしていた。ちなみに、旧ソ連崩壊でウクライナが独立した際、セヴァストポリ軍港の黒海艦隊がウクライナに接収されたんだが、同艦はすぐに黒海を離れ、北洋艦隊に逃げ込んだ。しかし、ウクライナ内ムィコラーイウという街の造船所で建造中だった同級ヴァリャーグは、ウクライナが接収して中国に売却しています。

こうして黒海から地中海へ軍用艦船を出入りさせることができるようになったロシアなんだが、地中海沿岸諸国のほとんどは旧西側の息がかかっているため、リビアなどと交渉し、地中海での艦船の補給寄港地を探します。シリアのタルトゥース港も、冷戦時代からロシア海軍の補給や整備の拠点になっている。シリアのアサド政権にロシアが肩入れする理由の一つは、地中海でのプレゼンスを失いたくないからです。

アサド政権にロシア製の対艦ミサイルが供給されている、と話題になったことがあるんだが、軍用艦船にとって現代戦でもっともヤッカイなのはこの対艦ミサイルです。日本の陸上自衛隊にも12式地対艦誘導弾、という移動式の対艦ミサイルがある。尖閣諸島を含む南西諸島防衛のため、この新式のミサイルによる部隊が編成され、配備されるようです。また、航空機から発射される空対艦ミサイルも、自衛隊ではXASM-3という最新鋭型が開発中とのこと。

ロシア製の対艦ミサイルには、地上からも航空機からも発射可能なP-800という超音速対艦ミサイルがあります。射程距離は300Km、速度はマッハ2.5だそうです。これがシリアに本格配備されれば、イスラエルの艦船にとってかなりの脅威になる。イスラエルは2013年の8月にシリア領内を空爆しているんだが、目的はこの対艦ミサイルの破壊だった、と言われています。しかし、世界の耳目がウクライナに集中している中、表向きは米国がシリア問題から手を引き、依然としてシリアではロシアのプレゼンスが強化されつつあるようです。

また、ロシアは中国にもミサイルを売ることを決めました。これはS-400という地対空ミサイル。地対空ミサイルといえば、米国のパトリオットが有名です。パトリオットミサイルは、湾岸戦争時にイラク軍のスカッドミサイルを迎撃し、日本の航空自衛隊にも配備されています。ロシアのS-400は、パトリオットミサイルのほぼ倍である400Kmに達する射程距離があるらしい。また、ステルス性を持ち、多数のミサイルによる飽和攻撃も可能と言われています。

現代戦では、敵方の航空基地やミサイル陣地をより早く叩き、ミサイルを含む航空勢力による反撃の芽を摘む、というのが要諦になっているんだが、有事の際には相互に国内外の基地に対し、攻撃をし合うことになります。先手を取り、反撃を抑え込んで制空権を奪取すれば、あとは陸上部隊でも艦船でも力押しに押していけばいい。同時に、自陣地への敵方の攻撃を無力化できればパーフェクトでしょう。

ロシア製のS-400という地対空ミサイルは、たとえば台湾有事の際に台湾側の航空勢力の反撃を抑え込むことができます。中国はインドとも対峙しているんだが、こうした新たな兵器の配備が中印間の緊張関係に微妙な影響を与える可能性も低くない。表題の記事では、核保有国であるインドの先制攻撃が引き起こされかねない、と警鐘を鳴らしています。

THE DIPLOMAT
Putin Approves Sale of S-400 to China


Male Eating Disorders on the Rise as Men Delay Help For ‘Women’s Illness’
INTERNATIONAL BUSINESS TIMES
社会的性差であるジェンダーは、いろんな影響を我々の心理に与えています。多く女性の精神的疾患とされている「摂食障害」では、当然ながら男性の患者も多い。性別に特徴的な病気というのは、別の性の患者はそれを打ち明けにくい、という側面があります。ハゲは男性にとって深刻な問題なんだが、実は女性にも薄毛に悩む人は多い。男性にも社会的に「男とはこうあるべき」という心理的圧力に抗しきれず、精神的な病を患ってしまう人がいます。男性の「摂食障害」も同じで、男性は筋肉質で胸板が厚く引き締まった体型がいい、というイメージに押しつぶされてしまう。マジメな人ほどこうした考えに支配されがちなので要注意です。

Journalism needs the right skills to survive
Poynter.
「ジャーナリズムの生死」が問題になっているのは、日本だけじゃなさそうです。いわゆる「STAP細胞」問題で、当事者の小保方晴子氏が先日、記者会見をしました。あれを見聞きしても、記者の科学リテラシーが低過ぎる。あの中には理系の大学を出たような記者もいたと思うんだが、小保方氏の「200回以上(STAP細胞の作成に)成功した」という点になぜ突っ込まなかったのか。彼女が『nature』に最初に論文を提出したのは、2012年だったと記憶しています。たった2年~3年の間に200回、というのは、ちょっと無理があった。せいぜい十数回程度にしておけば良かったのに、墓穴を掘った、という感じです。いったい何をもってして「STAP細胞」ができた、というのか、そのあたりに対する疑問から、やはり「STAP細胞」はないのに違いない、という推測をしている人は多い。この記事では、ジャーナリストを育成する教育とジャーナリストに必要な各種スキルについて書いています。ジャーナリストは、好奇心旺盛でなんに対しても真摯かつ謙虚な姿勢を維持し、専門以外のことにも興味があり、デジタルを含む技術革新に柔軟で、取材方法やコンテンツの制作に適切な能力を持つ、といった当たり前のことができない時代になっているようです。

タランチュラの脱皮シーンにクリス・カニンガムの映像の音声をかぶせたシュール映像「molt.」(蜘蛛注意)
カラパイア
最近よくネット上の動画に「閲覧注意」という但し書きがついたものを見かけます。不気味だったり感情を逆なでしたりバイオレンスだったりするんだが、人間にはいろんな「恐怖症」があり、高所恐怖症や閉所恐怖症、先端恐怖症なんかは有名です。中には、蓮の実のようなツブツブの集合体に恐怖する「トライポフォビア(集合体恐怖症)」とかピエロが怖い「道化恐怖症」、人形が不気味に見えてしかたない「人形恐怖症」なんてのもある。ヘビやクモに対する恐怖心もあり、この動画なんかはけっこう危険。しかし、ソフトシュルクラブは美味いんだが、外骨格の生物ってのはやっかいですね。

世界初・車体の一部を「透明」にする技術をランドローバーが発表
Gigazine
これってようするに、車体を透けて見るんじゃないですね。デジカメの「バリアングル」のようにボンネットごしの画像をカメラ経由でドライバーが見えるように送っているわけです。あたかもボンネットが「透明」になったかのように見える。カメラが故障すると使えなくなる技術といえます。


アゴラ編集部:石田 雅彦