若者が選挙で勝つには --- 海老澤 由紀

アゴラ

はじめまして、海老澤由紀です。元プロスノーボーダー。前回の衆議院議員選挙、都議会議員選挙に出馬しました。現在は政治活動家です。よろしくお願いします。

わたしは、先日行われた都知事選挙で、中盤から候補者の家入かずまさんのお手伝いをさせて頂きました。家入さんは、35歳と候補者の中で一番若く、「政治離れ」とされる若い世代に、その主張が届いたと思います。

残念ながら8万8936票を獲得しましたが落選しました。この経験を振り返りながら、「若い世代が民意を政治で示すにはどう考えたらいいか」を、考えてみます。


■「断絶を埋めたい」

家入さんの選対に参加したのは、知人の紹介でした。その時に、出馬の動機を家入さんはこう話しました。

「政治が僕ぼくらの声を聞いてこなかったと思います。けれども様に、僕ぼくらもまた、政治家に、政治を押し付けてきた面がありますよね。ぼくがメディアから泡沫候補扱いをされたように、ぼくらもまた、泡沫有権者のような扱いをされてきた。政治と僕ぼくらの間に、ある断絶を埋めたいんです。今回の選挙では、そんなことが伝わればいいと思うのです」

この言葉にしびれ、選挙活動を手伝うことになりました。

政治について、40歳代以下の低投票率が、問題になってきました。今回の都知事選も、投票率は46.1%と、史上3番目の低さ。前日に大雪になったことや、選挙前から大政党が相乗りして舛添要一さんの勝利が確実視されていたとはいえ、あまりにも残念です。

世代別投票率では、20代から30代までの得票率は、投票率を大きく下回ったと推定されています。これには若い世代の「どうせ聞いてもらえない」というあきらめがあったと思うのです。そうした人たちの気持ちを、家入さんは代弁していました。

IT企業の創業者で上場を達成。そしてかっこいい服装と、一見すると華やかに見える家入さんですが、実際はシャイな方でした。しかし、彼がポツリポツリと紡ぎだす言葉は、これまで政治に関心をもてなかった層に確実に響いているようでした。

■名前から変えよう、家入「インターネッ党」

その家入さんは、「インターネッ党」を立ち上げ、「2020年までに、東京23区の全区長選に若い候補者を擁立する」と発表しました。

家入さんが、「政治を変えたい」と、とても真剣に考えていることは、わたしも良く理解しています。

しかし、「インターネッ党」というネーミングは、あまり芳しくないと思います。ネットだけにこだわり過ぎているというレッテルが貼られる恐れや、若者だけの事を考えているとの誤解を与えかねません。他の世代にも真剣さが伝わる党名に変えるべきです。

■当選には、他の世代の支持が不可欠

なぜ他の世代が重要かというと、区長選挙は、国政選挙や都知事選と比べ注目度がだいぶ下がりますから、特に「組織票」がものをいうとても難しい選挙だからです。若い人の票だけで、当選者になるのはほぼ不可能と言えるからです。

都知事選のときと同様に、若い人だけに支持してもらおうとしたら当選はおぼつかないでしょう。

若い人の数はだたでさえ少ないのです。選挙に勝つためには、高齢者、中高年など他の世代に配慮し、一定数の得票が必要になります。

都知事選の投票日は、前日からの大雪でかなりの積雪でした。わたしが投票所に行くまでの雪道で見たのは、手押し車を押しながら、除雪された道の一部分を懸命に歩く腰の曲がった高齢女性、介助の方に支えられながらぬかるみを歩く高齢男性などでした。

若い人が「面倒」という理由で棄権する中、大勢の高齢者の方々が真面目に選挙に行っています。わたしから見ると、それこそ命がけで投票に向かう高齢者です。選挙で勝つならば、このような高齢者の方からも、ある程度の支持を受けなければなりません。

■他にも民意を示す方法はあるが……

もちろん、選挙で選ばれる以外にも政治を変える方法はあります。若い人の民意を政治に反映するために、他の方法を検討する価値はあるでしょう。

しかし、実現の可能性を別にしても、一番の近道だと考えたのが23区長を取りに行くという方法だったのですから、まずは最初の選挙に決まった練馬区長選に当選するためにどうすれば良いかを考えるべきです。

現在の選挙制度で当選することを考えるなら、どうしても、より幅広い年代に支持されることを意識しなくてはなりません。

家入さんは都知事選後、他世代の一部の著名人などから、期待されたり支持されることが多くなったようです。他の年代が、自分たちをどう見るのかということを意識することから始めて、そうした方々の意見にも真摯に耳を傾けて行きながら、戦略を練り直す必要があるのではないでしょうか。

海老澤 由紀
政治活動家
@ebisawayuki