何がエネルギー貧困を作り出すのか-政策の選択肢

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photo山本隆三
国際環境経済研究所主席研究員、常葉大学経営学部教授

雑誌「プレジデント」の4月14日号に、「地球温暖化か、貧困か」とのサブタイトルで「 雑誌「プレジデント」の4月14日号に、「地球温暖化か、貧困か」とのサブタイトルで「注目のキーワード‐エネルギー貧困率」についての私のコメントが掲載された。記事の一部が分かり難いので、少し詳しく説明したい。


欧州では、ガス、電気のエネルギー関係料金の支払いに問題がある人が増えている。現在は人口の8・5%、4000万人を超えていると報道されている。むろん、この背景には、欧州の景気低迷・失業者の増加の問題があるが、エネルギー価格の上昇が問題をさらに大きくしている。

リーマンショック前からの欧州27カ国の家庭用ガス料金と電気料金の推移を図‐1に示している。ガス料金、電気料金共に上昇しているが、値上がり率は電気料金のほうが大きい。」についての私のコメントが掲載された。記事の一部が分かり難いので、少し詳しく説明したい。

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ガス料金の値上がりの理由の一つは、EU内におけるガス生産数量の減少により、相対的に輸入量が増えていることだろう。輸入される天然ガスの価格は、世界的に原油価格に連動して動く「原油リンク」で決められていることが多い。この価格決定方式の見直しに欧州もアジア諸国の需要家も動いているが、まだ多くの契約は「原油リンク」だ。リーマンショックで下落した原油価格は、その後再度上昇し、2011年から時として1バレル100ドルを超えることもある。この原油の値上がりは天然ガス価格にも反映される。

電気料金が大きく上昇している理由はいくつかあるが、再生可能エネルギーによる発電が、多くの欧州諸国で増えていることも値上がりに影響を与えている。欧州主要国における再エネの発電比率は図‐2の通りに推移している。ドイツでは、再エネの発電による電気の買取りに関わる需要家の負担額、即ち買い取り価格と売電価格の差は、今年191億ユーロ(約2兆7000億円)と見積もられている。電気料金1kWh当たりでは6・24ユーロセント、円では約9円にもなり、標準家庭の負担額は年間3万円を超える。

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化石燃料を使用せずに、二酸化炭素を排出しない再エネの導入が必要なことは言うまでもない。しかし、再エネの導入により必需品のエネルギー価格が上昇し、エネルギー貧困層が増えるのは確実だ。結果、気候変動問題の対策をとりながら、違う社会問題を発生させることになる。地球規模の問題に取り組み、自国では貧困の問題を悪化させるというのは、正しい選択だろうか。

どちらが、将来社会にとり大きなリスクなのか、問題解決への寄与度とその影響の度合いはどうなのか。再エネを最大限導入という政策を打ち出す前に、リスク分析と社会への影響が検討されるべきだった。