インデックス運用が、いつまで経っても普及しない2つの理由 --- 内藤 忍

アゴラ

金融商品の運用手法には大きくインデックス運用とアクティブ運用の2つがあります。

インデックス運用とは、日本株で言えば日経平均やTOPIXのような指標(インデックス)に連動した運用成果を目指す手法。アクティブ運用とは、そのようなインデックスを上回る運用成果を目指す手法です。


機関投資家の世界で起こっているのが「インデックス化」の流れです。アクティブ運用はインデックス運用に比べ高コスト。にも関わらず、インデックスを上回る成果が出るとは限らないからです。

アメリカの著名投資家のウォーレン・バフェット氏も、自分がいなくなってからの資産運用をどうするかと聞かれ

「10%は現金にして、残りの90%はアメリカ株式のインデックス運用」

と言っています。

イギリスの経済誌「The Economst」(2014.5.3.-9.号)のこの記事(英語です)を読むと、インデックス運用が普及しない理由として2つのことが考えられます。

1つは、「売り手のインセンティブ」です。アクティブファンドの方が一般に手数料が高くなります。投資家から見れば、手数料はリターンを下げる最大の要因ですが、金融機関や金融機関からキックバックをもらっているファイナンシャルアドバイザーから見ると収益を上げる要因なのです。顧客のリターンを下げることによって、自分の収益が上がるという利益相反関係にあるのです。

もう1つは、「投資家の幻想」です。アクティブ運用で好成績を上げると、人気ファンドとなって資金が集まってきます。しかし、そのファンドがその後も良いファンドであり続ける保証はないのです。平均的に見れば、コストを含めた運用成績ではインデックス運用に軍配が上がります。

「自分ならインデックスを上回る優れたファンドを見つけることができる」という幻想が、アクティブファンドを選んでしまう原因になっているのです。

確かに、アクティブ運用をしているファンドの中には、本当に優れた運用方法で継続的に好成績を上げ続けるものも存在すると思います。しかし、そのようなファンドを事後的に見つけることはできても、事前に見極めることは極めて困難です。

ウォーレン・バフェットにしても今でこそ資産運用のマエストロとして世界中の尊敬を集めていますが、30年前にその技量を予見していた人はほとんどいないのです。

インデックスファンドはアメリカで誕生してから40年経っているのに、全体に占めるシェアは11%だそうです。これからインデックス化が進んでも、そのシェアは2倍の22%という予想。

2つの原因が変わらない限り、インデックス運用の普及のスピードは上がらない。これでは、知識の無い個人投資家がいつまで経っても報われないことになりますが、金融商品の売り手にとっては、とても都合の良いことなのです。

編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2014年5月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。