4月に発売した「究極の海外不動産投資」の広告が本日の日経新聞に掲載されています。その同じ朝刊の3面に、気になる記事が掲載されていました。
「2020年ごろをメドに導入する新たな国際金融規制で、自国政府が発行する国債を保有する銀行に自己資本を積むよう求める案が浮上している」という報道です。
ギリシアの債務危機をきっかけに、国が発行する債券(国債)もリスクがあるのではないかということで、それに見合った資本が必要になるという考え方です。
試算によると、あるメガ銀行の場合、現在15%の自己資本比率が2~5%下がるそうです。大手メガバンク3行の現状の連結自己資本は33.6兆円で、現状の自己資本比率を維持するには4.4兆~11兆円の資本増強が必要。
もしこれが現実味を帯びるとどうなるのでしょうか。
日本の国債は日銀の異次元緩和で10年債が0.6%と極めて低いレベルになっています。債券は買う人が多くなれば価格は上昇し、金利は下がります。現状は日銀が買い手となって、金利を低位安定させている状態です。
しかし、この状況を永遠に続ける訳にはいきませんから、国債の発行残高が減らなければ、別の投資主体が出てくる必要があります。
その役割を期待されていたのが銀行だった訳ですが、今回のような自己資本規制が導入されれば、買い手ではなく売り手に回る可能性も出てきます。
日本の個人も高齢化が進めば、資産の取り崩しを始めるようになり、銀行預金の残高が減っていけば、銀行の国債売却圧力はさらに高まります。
日本の国債を取り巻く環境を見ていると、トランプの「ババ抜き」のような構図が見えてきます。世界でも例を見ない高い水準まで価格が上昇(金利が低下)して、誰も買おうとしない状況で、日銀が保有している国債とこれから新たに追加発行される国債の買い手を見つけなければいけない状態。
国債の買い手がいなくなり、価格が下落すれば、日本国内の金利は上昇します。預金者にとっては朗報と思うかもしれませんが、住宅ローンの金利は上昇し、変動金利で借り入れしている人の中には返済額の増加に耐えられない人が出てくるはずです。企業のファイナンスコストも上昇し、経済にはマイナスの影響になります。
「ババ抜き」がいつどのようなマグニチュードで発生するのかは、予想しにくいですが、金融の世界の来たるべき「有事」に備えておく必要はあります。
少なくとも、固定金利の長期資産は保有しない。むしろ、固定金利で長期の借り入れを行っておくのが、来るべき変化への対応策になると思います。
編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2014年5月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。