大型倒産も十分ありえるブラック企業 --- 渡辺 龍太

アゴラ

ワタミやすき家のアルバイトが集まらず、店が営業出来なくなったり閉店に追い込まれています。そして、ワタミは上場以来始めて、大きな赤字を計上しました。これについて、ブラック企業として有名な企業が苦しんでいるので、世間で大きな注目を集めています。


私は、こういった会社が窮地に陥るのも、時間の問題ではないかと前々から、このブログでも書いてきました。というのも、ワタミやすき家の経営者の能力が非常に低いとしか言い様がないからです。

すき家の例で考えてみましょう。同じ品質の牛丼であれば、安い物が売れるのは当たり前です。なので、すき家は値下げという部分にのみ、力を入れるという戦略をとっています。そして、その戦略の中身というのが、人件費をとにかく抑えるという方法です。

人件費の押さえ方にも、ポジティブな押さえ方、そうでない押さえ方があると思います。ポジティブな方法は、”何らかの新しい機械やシステムを導入する事”で、今まで二人でしかできなかった仕事を一人にするとか、1時間かかっていた作業を30分で済ませる様にするという方法です。この辺の具体例は、以前、サイゼリアを例に紹介したので、気になる方はこちらを読んでみてください。

もう一つは、”何らかの新しい機械やシステムを導入する事なく”、従業員への命令を強めて今まで二人で行っていた仕事を一人でやらせ、1時間かかっていた作業を30分で済ませる様にさせるという方法です。この方法は、新たなシステムを考え出すより簡単に、初期費用もかからず行えます。しかし、この方法で人件費を抑えていては、会社として非常に弱い組織だという事は明らかです。

なぜなら、こういった方法で人件費を下げている会社の持っている経営ノウハウは『辛い仕事も従業員に引受させる!』にという事に過ぎません。そして、肝心な『時間あたり仕事の生産性を上げる!』という店舗運営ノウハウは、辛い命令を受けた従業員が独自に自分の中に持っている事になります。つまり、そういった生産性を上げるノウハウは、ブラック企業自体には蓄積されていかないという事になってしまいます。

なので、景気が良くなるとか、時代が変わるという事が原因で、『辛い仕事を引受させる!』という自社の経営ノウハウが通用しなくなれば、会社がどうなるかは誰だって分かります。それに加え、仕事の生産性を上げるノウハウは従業員の中にあるので、ベテランが一気に退職するという事に対する脆弱性に関しては、ブラック企業より右に出る企業も無いでしょう。そういった理由から、優秀な経営者は”ブラック経営”を行おうとは、従業員が可哀想とか以前に、経営リスクが高すぎて絶対に思わないのです。

恐らく、今までブラック企業が右肩上がりで経営者がカリスマに見えたのは、バブルの時に株で儲けていた人が輝いて見えていたのと同じなのではないでしょうか。今、ブラック企業バブルがはじけ、ブラック経営者の本当の能力を世間に晒す時が来ました。私は大型倒産などがあっても、全く不思議ではないと思います。


編集部より:このブログは「World Review 編集長 渡辺龍太のブログ」の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「World Review 編集長 渡辺龍太のブログ」をご覧ください。